[古典物理学] 速度と加速度の違い

2017年7月16日(更新: 2018年6月25日)

移動、速度、スピード

速度」というと日常生活でもよく使われますが「加速度」はそれほどでもないかもしれません。

今回は、物理学の最も基礎となる「速度」および「加速度」の概念とこれらの違いについて、できるだけ前提知識を必要としないように紹介します。練習問題もありますので、実際に問題に取り組んで理解を深めていただければと思います。

速度とは

物理学における速度は「ある物体の速さと移動方向を合わせた量」とされます。

つまり、厳密には「速さ」と「方向」を持った概念です。しかし、初めからこの2つを同時に考えるのは大変なので、まず方向を無視できる一直線上での一方向の動き(速さのみ)を考えてみます。

速さとは

速さの基本は「ある時間の間に移動した距離」です。

$$速さ = \frac{移動した距離}{移動にかかった時間}$$

移動にかかる時間の違いよって、以下の2つの速さが考えられます。

  1. ある一定の時間の間に移動した距離を考える「平均の速さ」
  2. ある瞬間に移動した距離を考える「瞬間の速さ」

一つずつ順番に詳しく見ていきましょう。

平均の速さ

平均の速さは、算数の問題で馴染みがあるかもしれません。例えば、以下のような問題で求める速さです。

Aさんが家から1km離れた学校まで10分で移動したとすると、Aさんの歩く速さは何m/分か。

1km(1000m)を10分で移動したことから、その速さは $\frac{移動した距離}{かかった時間} = \frac{1000}{10} = 100(m/分)$ となります。これが平均の速さです。

平均の速さは、Aさんが学校に到着するまでの間に起こる厳密な速度変化については無視しています。例えば、途中で信号で止まったり、駆け足になったりということがあるかもしれません。

平均の速さは「それらの速度変化を全て含めると 100m/分 で終始歩いたのと同じ」ということを示す速さです。

つまり、一般化すると、平均の速さとは「ある物体が時間 $t$ の間に距離 $x$ を移動するとき、常に同じ速さで移動したと仮定した場合の速さ $v=\frac{x}{t}$」と言えます。

一定の速度で直線上を移動する運動を等速度直線運動と呼びます。

瞬間の速さ

ある非常に短い時間(瞬間)における速さです。

先ほどのAさんの例で言えば、信号で止まっているときのAさんの速さや駆け足のときのAさんの速さなど、ある瞬間における速さのことです。その瞬間を写真に撮ったときの速さと言えばわかりやすいかもしれません。

この短い時間を $Δt$、その間に移動した距離を $Δx$ とすると、瞬間の速度 $v$ は $v = \frac{Δx}{Δt}$ となります。

(記号 Δ は「デルタ」と呼ばれ、非常に小さいということを表します。d と書く場合もあり、$v = \frac{dx}{dt}$ も同じ意味になります)

瞬間の速さは、次に紹介する「加速度」を考える上で必要となります。

方向について

さて、上記の速さに方向の概念を加えたものが速度なのでした。「速さ」は単純に物体の移動速度を表すだけであり、その物体がどの方向に動いているかは示しません。

そこで、速さに移動方向の情報を追加してやることで、どの方向にどれだけの速度で動いているかがわかるようになります。

具体的に言えば「東に10m/分」や「南に10m/分」というのが速度です。高校物理の問題では「水平方向に10m/秒」や「角度30°で10m/秒」などのように表現されます。

難しい言葉で言えば、速度はベクトル(矢印)で表せる量ということになります。

加速度とは

速度は、時間の長短の違いはありましたが、共通して表すのは「ある時間の間に変化した距離」でした。

加速度とは「ある時間の間に変化した速度」を表す量です。

具体的に言えば、ある一直線上を、100(m/秒)で移動する物体が、10秒後に同じ方向に200(m/秒)になったとすると、その加速度(記号は $a$ が使われます)は以下のように表すことができます。

$$a = \frac{変化した速度}{変化にかかった時間} = \frac{200 – 100}{10} = 10(m/秒^{2})$$

加速度の単位は分母が時間の二乗になります。単位を省略せずに上の式を書いてみるとわかります。

$$a = \frac{変化した速度(m/秒)}{変化にかかった時間(秒)} = \frac{(200 – 100)(m/秒)}{10(秒)} = 10(m/秒^{2})$$

秒は「s」と書かれる場合が多いため、以下の方がわかりやすいかもしれません。

$$a = \frac{(200 – 100)(m/s)}{10(s)} = 10(m/s^{2})$$

では、次のような場合、物体の加速度はどうなるでしょうか。

練習問題1

Aさんが学校へ向かう途中、信号が赤に変わりそうだったので、走って横断歩道を渡った。走り出す直前の速度が60m/sで、横断歩道を渡りきった瞬間の速度は100m/sであった。走り出してから渡り終えるまでの時間が5秒だったとすると、平均の加速度はいくらか。
答えをみる
$$a = \frac{変化した速度(m/s)}{変化にかかった時間(s)} = \frac{100 – 60}{5} = 8(m/s^{2})$$

練習問題2

止まっていた物体が、一定の割合で速さを増し、0.5秒後に10(m/s)の速さとなった。この物体の加速度はいくらか
答えをみる
$$a = \frac{変化した速度(m/s)}{変化にかかった時間(s)} = \frac{10}{0.5} = 20(m/s^{2})$$

最も身近な加速度は、物体が落ちるときにかかる重力加速度です。場所によって微妙に変わりますが、おおよそ $9.8(m/s^{2})$ です。

一定の加速度で直線上を移動する運動を等加速度直線運動と呼びます。

加速度も速度と同じく「平均の加速度」と「瞬間の加速度」がありますが、高校物理学の問題では主に平均の加速度が問題となります。上の例や練習問題は、細かい加速度の変化は無視したものですので平均の加速度です。

(瞬間の加速度は $a = \frac{Δv}{Δt} = \frac{dv}{dt}$ と表せます)

まとめ

速度は「ある時間のうちに変化した距離」であり、加速度は「ある時間のうちに変化した速度」でした。これらは力学の基礎となる概念です。

参考: 文英堂 土屋博資 日常学習から大学入試まで 物理Ⅰ・Ⅱ計算の考え方解き方

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