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前回はSI単位系(基本単位)について、その種類と定義を紹介しました。
今回は、その基本単位を組み合わせてできる組立単位の種類と定義について紹介します。
この記事で紹介する組立単位は以下の通りです。
単位記号 | 単位名称 | 単位が表す量 | 基本単位との関係 |
---|---|---|---|
N | ニュートン | 力 | kg・m/s2 |
Pa | パスカル | 圧力 | N/m2 |
J | ジュール | 熱量(エネルギー) | N・m |
W | ワット | 仕事率 | J/s |
C | クーロン | 電気量 | A・s |
V | ボルト | 電圧 | W/A または J/C |
Ω | オーム | 電気抵抗 | V/A |
組立単位の名前には、その分野で功績を残した人物の名前の頭文字が付けられます。
各組立単位の定義
一つひとつの組立単位の意味と基本単位との関係について詳しく紹介します。
ニュートン(N)
物理的な力を表すための単位です。
質量が 1kg の物体に、1m/s2 の加速度を起こさせる力が 1N と定義されます。
つまり、基本単位のみで表記すれば、上記の通り kg・m/s2 となります。「・」は掛け算の記号「×」と同じです。
重力によって物体が得る加速度は、およそ 9.8m/s2 です。
したがって、質量が1kgの物体が重力によって受ける力をニュートン(N)を使って表すと、
$$1(kg) \times 9.8(m/s^{2}) = 9.8(kg \cdot m/s^{2}) = 9.8(N)$$
となります。この 9.8N のことを、キログラム重(kgf)と呼ぶことがあります。
パスカル(Pa)
パスカルは、単位面積あたりに働く力(圧力)を表すための単位です。
具体的には、1m2 の範囲に 1N の力が働く圧力のことを指します。
基本単位のみで表すと、以下のようになります。
$$1N \div 1m^{2} = N/m^{2} = \frac{kg \cdot m/s^{2}}{m^{2}} = kg/(m \cdot s^{2})$$
ジュール(J)
エネルギーを表すための単位です。
その定義は、1N の力が物体(質量を問わない)を1方向に 1m だけ動かすエネルギーです。
ジュールをSI単位のみで表すと、以下のようになります。
$$J = N \cdot m = kg \cdot m^{2}/s^{2} = kg \cdot (m/s)^{2}$$
つまり、エネルギーは質量と速度の二乗に比例します。
ちなみに、食品のエネルギーの単位として使われるカロリー(cal)は 「1g の水を 1Pa のもとで 1℃ 上昇させるのに必要なエネルギー」のことです。
そして、1kcal(キロカロリー)は4.184Jと同等のエネルギーです。
$$1000cal = 1kcal = 4.184J$$
ジュールは後述するクーロンとボルトを用いて定義することもできます。
1J は 1N の力で 1m の距離を動いた時の力を表す。したがって、1kg の物を重力に逆らい 1m 持ち上げると、9.8[ms-2] × 1[kg] = 9.8[J] の仕事をしたことになる。電気的な仕事を考えてみると、高々 9.8[C] の電荷を 1[V] の電位差の障壁を越えるだけでこれと同じだけの仕事をしてしまう。
日本大学工学部 電気化学研究室 第二章:物質のエネルギーと平衡
ワット(W)
ワットは仕事率を表すための単位です。
仕事率とは、単位時間あたりの仕事(エネルギー)のことです。
基本単位のみで表すと、以下のようになります。
$$W = J/s = N \cdot m / s = kg \cdot (m/s)^{2} / s = kg \cdot m^{2}/s^{3}$$
クーロン(C)
電気分野でよく使われる単位です。
1A の電流が 1秒間 に流れる電気量を表します。つまり、$A \cdot s$ です。
ボルト(V)
ボルトは電圧や電位を表すための単位です。
先ほども少し触れましたが、ジュールはこのボルトとクーロンを用いて以下のように定義できます。
1J は 1V の電位差の中で 1C の電荷を動かすのに必要な仕事
つまり、$J = C \cdot V$ です。これを変形すると、
$$V = J / C = J / (A \cdot s) = (J / s) / A = W/A$$
となります。
電荷を 1ニュートン の力で 1m 動かす。このとき、力の行う仕事は 1N・1m = 1J ということだがクーロンの法則から電気的な力は電気量に比例するのでその仕事も電気量に比例する。そこで、単位電気量あたりの仕事を「電位」という量で表す。
電位 = 仕事 = 電気量
電位の単位は 1ジュール を 1クーロン で割った単位、ボルト(V)とする。ボルトの名称は電池をはじめて作ったボルタにちなむ。
名古屋大学学術リポジトリ 電荷とクーロンの法則
オーム(V)
電流の流れにくさである電気抵抗を表す単位です。
加えた電圧(V)に対して、流れる電流(A)が小さいほど、電気抵抗(Ω)は大きいと言えます。
オームの定義の式からも、そのようになっていることが確認できます。
$$Ω = V/A$$
おしまい
これ以外にも、組立単位は数多く存在します。
しかし、元となっているのは前回紹介したSI基本単位です。
これらとの関係を確かめることで、その組立単位がどのような意味を持っているかを知ることができます。