電気のはなし(1)電気とは何か

2017年1月13日(更新: 2017年1月16日)

電気の学習をするにあたって、電流や電荷、電流などの言葉の意味の違いを理解することが重要になります。

今回は電気の元となる電子と、電荷や電流との関係について紹介します。

電気の正体

電気の源となるものは電子と呼ばれる素粒子です。

では、電子はどこに存在するのでしょうか。それは、世界のあらゆる物質を構成している原子にあります。

原子は、正(プラス)の電気の量を持つ陽子負(マイナス)の電気量を持つ電子を持っています。

この「電気の量」のことを電気量電荷と呼びます。

原子のモデル、陽子と電子

そのため、普通はこれらが打ち消しあって、原子全体としては中性(プラスでもマイナスでもない状態)となっています。

しかし、2つのものを擦り合わせるなどの、外部から刺激を加えると、ものの種類によっては電子が移動して別のものに移ります。

これによって後述する静電気が発生します。(陽子は原子の中心にあるため移動しません)

電子1個が持っている電気量が最小単位です。これを電気素量e)と呼びます。

e = 1.602 × 10-19[C]

なぜ電子1個の電気量を1としないのか

電子1個の電気量が、電気の最小単位であるならば、これを1[C]とすれば良いのではないか? と考えられるかもしれません。

残念ながら、クーロンの単位は電子が発見されるよりも前に、後述する電流(アンペア)から定義されています。

したがって、その辻褄を合わせるために、電子の電気量は上記のような半端な数字となっているのです。

静電気

静電気は、歴史上で最初に発見された電気と考えられています。

古代ギリシャにおいて、琥珀を擦ると、他のものを吸い寄せることが確認されていたとされています。

中世のイギリスでそのことが再発見され、現在の電気の英語名であるエレクトリシティは琥珀のラテン語に由来します。

静電気が発生する理由は、外的な力によって原子が持っている、原子の中心から遠い場所にある電子(価電子)が別の物質に移ることです。

電子自体はマイナスの電荷を持ちますので、電子を多く持っている物質がマイナスとなります。逆に、電子を渡した(奪われた)物質はプラスになります。

あくまで移動するだけで、電子が消えたり生まれたりすることはありません。これは電荷保存の法則と呼ばれます。

人体はプラスに帯電しやすく、シリコンなどはマイナスに帯電しやすい性質が知られています。

原子に着目すれば、電子の移動が起きて電気的に中性でなくなった原子をイオンと呼びます。

電子を多く持っている原子がマイナスイオン、原子の数が少なくなった原子がプラスイオンです。

電流

上記の静電気を起こす原因となる、移動する電子のことを自由電子と呼びます。

この自由電子の流れによって生まれる電気の流れのことを電流と呼びます。ただし、電流は電子が流れる方向とは逆になります。

ある種の物質にある種のエネルギー(熱、磁力、科学、等)が加わると、原子のまわりを周回する電子のうち最外周の束縛力の弱い電子がエネルギーを受けて束縛力を 振り切り、原子の外へ移動してしまう。最外周の電子が1個抜けた原子はプラス電気を帯びる。抜けた電子は自由電子と呼ばれ、マイナス電気を帯びる。

ある区間を電子が通り過ぎたとき、そこに電流が流れた、という。 (歴史的には、電流が先に観測されて、あとからそれが電子の通過である ことがわかった。)図1.2では左から右へ電子が移動しているが、電子はマイナスなので、 マイナス電流が左から右へ流れたことになる。しかし電流はプラスで表現する習慣なので、図1.2 では「電流が右から左に流れた」こととなる。
熊本大学大学院 社会文化科学研究科 教授システム学専攻 ハードウェア基礎 2002年度版テキスト

1800年に発明されたボルタの電池(亜鉛板と銅板を硫酸水溶液中に浸した電池)により、初めて電荷を安定的に継続して移動させることができるようになり、それが静電気に対する動電気(電流)とされました。

前述のクーロン[C]の定義ですが、1秒間に1アンペアの電流によって運ばれる電気量が1[C]とされています。クーロンは組立単位のひとつです。

プラスとマイナスの決められ方

ものを擦って発生する静電気の種類がプラスとマイナスの2種類あることが確認された後、その種類に名前を与えたのは、アメリカの政治家であるベンジャミン・フランクリンでした。

その定義方法は「絹布でガラスを擦って生ずる電荷がプラス、エボナイト(ゴム)を猫の毛皮で擦って生ずる電荷をマイナス」としたそうです。

ここで,絹布で硝子を擦って生ずる電荷を正電荷,エボナイトを猫の毛皮で擦って生ずる電荷を負電荷と決めます.このように正負を決定したのは,かの有名なベンジャミン・フランクリンです.フランクリンによって決められた電荷の符号でいきますと,それから1世紀後に発見された電子は負の電荷であるということになりました.このために,電流の流れる方向と電子の運動方向を全く反対にしなければならなくなりました.本当は,フランクリンは電荷の正負を反対にしておけばよかったのです.今となっては遅過ぎます.
公立大学法人 山梨県立大学 第2章 静電界

参考

山口大学 教育学部 数理情報コース 第2章 静電気

エレクトロニクス:理学科物理コース 電磁気学の歴史の概観

エレクトロニクス:理学科物理コース 静電気

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