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前回は等比数列の和に関して解説しました。
今回は、いままで解説してきた数列(等差数列、等比数列)よりも複雑な一般項を持つ数列の和を計算する際に使われる、数学記号シグマ(Σ)とその計算方法について解説します。
シグマ(Σ)とは
シグマは、数列のある項から別のある項までの和を表す記号です。
項が $a_n$ で表される数列の第 $i$ 項から第 $k$ 項までの和を表すには、シグマを使って以下のように書きます。
$$\displaystyle \sum_{n = i}^{k}a_n$$
Σの下に書かれている式の左辺の文字が、項の番号を表す変数(増えていく数字)で、右辺の文字が足し始める最初の項の番号です。つまり、この場合は「$n$ が $i$ から増えていく」という意味になります。
Σの上に書かれている数字が終わりの項の番号です。この例の場合は「$n$ が $k$ まで増える」ということになります。
つまり、$\displaystyle \sum_{n = i}^{k}a_n$ とは、項の番号を表す変数 $n$ が $i$ から $k$ までの増える間の項の合計値という意味です。
練習問題1
答え
シグマの下に「項の番号を表す変数 = 最初の項の番号」と書き、シグマの上に「足す項の最後の番号」を書きます。したがって、
$$\displaystyle \sum_{n = m}^{p}a_n$$
練習問題2
答え
項の番号を表す変数 $n$ は、他の記号に変えられることがよくあります。数学の教科書などは、項の変数を $k$ としてる場合も多いです。混乱しないようにここで確認しておきましょう。
今回は、項の番号を表す変数が $k$ になっているので、シグマの下は $k = …$ となります。また、今回は具体的な数値がわかっていますので、それを当てはめます。
$$\displaystyle \sum_{k = 2}^{11}a_k$$
どの部分が $k$ に変わっているかしっかり確認しておいてください。
シグマを使った数列の和
例えば、一般項が $a_k = 2k$ で表される数列の第 $i$ 項から第 $n$ 項までの和を普通に書くと以下のようになりますが、
$$2i + 2(i + 1) + 2(i + 2) + \cdots + 2n$$
シグマを使うと、まったく同じ意味の式を以下のように簡単に書くことができます。
$$\displaystyle \sum_{k = i}^{n}2k$$
具体的な数値を入れて考えてみましょう。この数列の初項から第10項までの和をシグマを使って表すなら、
$$\displaystyle \sum_{k = 1}^{10}2k = a_1 + a_2 + \cdots + a_{10} = 2 \cdot 1 + 2 \cdot 2 + \cdots + 2 \cdot 10$$
$$ = 2(1 + 2 + \cdots + 10) = 110$$
シグマの中にある定数は、シグマの外に出す(あとから掛ける)ことができます。この例では、2が全ての項に共通しているのでくくり出すことができます。
$$\displaystyle \sum_{k = 1}^{n}2k = 2 \displaystyle \sum_{k = i}^{n}k$$
このようなシグマに関するルールがいくつかありますので、詳しく見ていきましょう。
シグマのルールと公式
ルール1 定数のくくり出し
先ほども説明したように、シグマの中にある変数に掛けられた定数はくくり出すことができます。
$$\displaystyle \sum_{k = i}^{n}ck = c \displaystyle \sum_{k = i}^{n}k$$
ルール2 式の分解
シグマの足し算、引き算は分解(結合)ができます。例えば、以下のようにできます。
$$\displaystyle \sum_{k = 1}^{n}(3k + 4)$$
$$\displaystyle \sum_{k = 1}^{n}3k + \displaystyle \sum_{k = 1}^{n}4$$
$$3\displaystyle \sum_{k = 1}^{n}k + \displaystyle \sum_{k = 1}^{n}4$$
練習問題3
公式1 定数の和
シグマの中身が定数だけの時は、以下のように変形できます。($c$ を定数とします)
$$\displaystyle \sum_{k = 1}^{n}c = \overbrace{c + c + \cdots + c}^{n個} = n \times c$$
練習問題4
答え
$$\displaystyle \sum_{k = 1}^{10}3 = 10 \times 3 = 30$$
公式2 単純に増加する数列の和
項の値が1ずつ増加する数列の和を求める公式です。初稿が1で、第n項まで足す場合、等差数列の和の公式から以下にように変形できます。
$$\displaystyle \sum_{k = 1}^{n}k = 1 + 2 + \cdots + n = \frac{1}{2}n(1 + n)$$
公式3 2乗ずつ増加する数列の和
項の番号の2乗ずつ値が大きくなる数列の和の公式です。
$$\displaystyle \sum_{k = 1}^{n}k^2 = 1^2 + 2^2 + \cdots + n^2 = \frac{1}{6}n(n + 1)(2n + 1)$$
なぜこの式が導けるのか証明してみます。
証明
$$(k + 1)^3 = k^3 + 3k^2 + 3k + 1$$
右辺の $k^3$ を左辺に移動すると、
$$(k + 1)^3 – k^3 = 3k^2 + 3k + 1$$
これに、具体的な値を代入していったものを表にすると、
$k$ の値 | 左辺の式 | 右辺の式 |
---|---|---|
1 | $2^3 – 1^3$ | $3 \times 1^2 + 3 \times 1 + 1$ |
2 | $3^3 – 2^3$ | $3 \times 2^2 + 3 \times 2 + 1$ |
3 | $4^3 – 3^3$ | $3 \times 3^2 + 3 \times 3 + 1$ |
$\cdots$ | $\cdots$ | $\cdots$ |
n | $(n + 1)^3 – n^3$ | $3 \times n^2 + 3 \times n + 1$ |
これを、各辺ごとに足し合わせると、
$$(n + 1)^3 – 1^3 = \displaystyle \sum_{k = 1}^{n}(3 \times k^2 + 3 \times k + 1)$$
$$(n + 1)^3 – 1^3 = 3\displaystyle \sum_{k = 1}^{n}k^2 + 3\displaystyle \sum_{k = 1}^{n}k + \displaystyle \sum_{k = 1}^{n}1$$
$$(n + 1)^3 – 1^3 = 3\displaystyle \sum_{k = 1}^{n}k^2 + 3\displaystyle \sum_{k = 1}^{n}k + n$$
求めたいのは $\displaystyle \sum_{k = 1}^{n}k^2$ の値なので、これ以外を右辺に移動させて変形すると、
$$3\displaystyle \sum_{k = 1}^{n}k^2 = (n + 1)^3 – 1 – 3 \times \frac{1}{2}n(n + 1) – n$$
$$ = n^3 + \frac{3}{2}n^2 + \frac{1}{2}n$$
$$\displaystyle \sum_{k = 1}^{n}k^2 = \frac{1}{3} \times (n^3 + \frac{3}{2}n^2 + \frac{1}{2}n)$$
$$ = \frac{1}{3} \times \frac{1}{2}(2n^3 + 3n^2 + n)$$
$$ = \frac{1}{6}n(2n^2 + 3n + 1)$$
$$ = \frac{1}{6}n(n + 1)(2n + 1)$$
以上より、シグマの2乗の和の公式 $\displaystyle \sum_{k = 1}^{n}k^2 = \frac{1}{6}n(n + 1)(2n + 1)$ が証明できました。
公式4 3乗ずつ増加する数列の和
項の番号の2乗ずつ値が大きくなる数列の和の公式です。
$$\displaystyle \sum_{k = 1}^{n}k^3 = 1^3 + 2^3 + \cdots + n^3 = \left\{\frac{1}{2}n(n + 1)\right\}^2$$
この式も 公式3 と同様の方法で証明できます。
以上がシグマで数列の和を計算する上で重要なルールと公式です。次回は実際にシグマを使って問題を解いていきましょう。