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前回は公比数列の基本とその一般項について解説しました。
今回は、等差数列と同じように公比数列の和の計算方法とその公式について解説します。
等比数列の和の公式
まず、等比数列の和を普通に計算することを考えてみましょう。以下のような数列があるとします。
$$3, -6, 12, -24, 48, -96, 192, -384$$
これは、初項 3、公比 -2、項数 8 の等比数列です。項数がこれくらいであれば、すべての項を足すだけでも数列の和が求められます。
$$S_8 = 3 – 6 + 12 – 24 + 48 – 96 + 192 – 384 = -255$$
しかし、等比数列はマイナスや分数が絡むことが多く、ただ足す方法では時間がかかる場合が多いです。
一般項を利用して和を計算
等比数列の一般項は、以下の形になるのでした。
$$a_n = a_1 \cdot r^{n – 1}$$
上の数列の項を、この一般項で置き換えてみると、この数列の和の式は以下のように書き換えられます。
$$S_8 = a_1 + a_2 + a_3 + \ldots + a_8$$
$$S_8 = a_1 \cdot r^{1 – 1} + a_1 \cdot r^{2 – 1} + a_1 \cdot r^{3 – 1} + \ldots + a_1 \cdot r^{8 – 1}$$
初項 $a_1$ はすべての項に共通してありますので、これをくくり出すと、
$$S_8 = a_1 \cdot (r^{1 – 1} + r^{2 – 1} + r^{3 – 1} + \ldots + r^{8 – 1})$$
$$S_8 = a_1 \cdot (1 + r + r^2 + \ldots + r^7)\tag{1}$$
実際に数値を入れてみると、
$$S_8 = 3 \cdot \{1 + (-2) + (-2)^2 + \ldots + (-2)^7\}$$
しかし、これでもまだ簡単に計算できるようになったとは言い難いです。
式を変形して公式を導く
上の式では、結局公比の2乗、3乗、… を計算して足さなければいけません。この部分の計算をなくすことができれば和の計算が簡単になります。
そのための式変形を考えてみましょう。前述の式(1)の両辺に公比 $r$ をかけると、
$$r \cdot S_8 = a_1 \cdot (r + r^2 + \ldots + r^8)\tag{2}$$
式(2)の両辺から式(1)の両辺を引くと、右辺は被っている値が消えるので、
$$r \cdot S_8 – S_8 = a_1 \cdot (r^8 – 1)$$
$$(r – 1) \cdot S_8 = a_1 \cdot (r^8 – 1)$$
$$S_8 = a_1\frac{r^8 – 1}{r – 1}$$
これは項数が $n$ のときも成り立ちますので、一般化すると、
$$S_n = a_1\frac{r^n – 1}{r – 1}\tag{☆}$$
これが公比数列の和の公式です。教科書によっては、この公式の分子と分母に -1 をかけて、以下の形にしているものもあります。
$$S_n = a_1\frac{1 – r^n}{1 – r}$$
公比が1以外の場合は、この式(☆)で公比数列の和が計算できます。
公比が1の場合は、そもそも項の値が変化しないので、$初項 \times 項数$ で計算できます。
練習問題1
$$3, -6, 12, -24, 48, -96, 192, -384$$
式(☆)より、
$$S_8 = 3 \cdot \frac{(-2)^8 – 1}{(-2) – 1} = 3 \times \frac{256 – 1}{-3} = -255$$
練習問題2
$$13, 13, 13, 13 ,13 ,13 ,13 ,13$$
公比が1の等比数列なので、$初項 \times 項数$ で計算できます。
$$S_n = a_1 \times n = 13 \times 8 = 104$$
練習問題3
$$-8, 12, -18, 27, …$$
この数列は、初項 -8、公比 $-\frac{3}{2}$ の無限等比数列です。
式(☆)より、第n項までの和は
$$S_n = (-8) \times \frac{(-\frac{3}{2})^n – 1}{(-\frac{3}{2}) – 1} = \frac{16}{5}\left\{\left(-\frac{3}{2}\right)^n – 1\right\}$$
練習問題4
等比数列の和の応用問題です。
まず、公比 $r$ が1であるかを確かめます。$r = 1$ であれば次の式が成り立ちます。
$$S_5 = a_1 \times 5 = 248$$
$$S_9 = a_1 \times 9 = 4088$$
この2つの式を満たす $a_1$ は存在し得ないので、公比は1でないことがわかります。
公比が1以外の時は、公比数列の和の公式が使えますので、以下の関係が成り立ちます。
$$S_5 = a_1 \cdot \frac{r^5 – 1}{r – 1} = 248\tag{1}$$
$$S_9 = a_1 \cdot \frac{r^9 – 1}{r – 1} = 4088\tag{2}$$
式(2)の両辺を式(1)の両辺で割ると、
$$\frac{r^9 – 1}{r^5 – 1} = \frac{4088}{248} = \frac{511}{31}$$
この式の分子と分母から、以下の式が導き出せます。
$$r^9 – 1 = 511$$
$$r^9 = 512\tag{3}$$
$$r^5 – 1 = 31$$
$$r^5 = 32\tag{4}$$
式(3)と式(4)を同時に満たす $r$ の値は $2$ とわかります。この結果を式(1)に代入すると、
$$a_1 \cdot \frac{32 – 1}{2 – 1} = 248$$
$$a_1 = \frac{248}{31} = 8$$
以上から、この等比数列の一般項は、以下のようであることがわかります。
$$a_n = 8 \cdot 2^{n – 1}$$
練習問題5
同じ数字が並ぶ数列も、分解することで等比数列とみなすことができます。
$$6, 66, 666, 6666, \cdots$$
この数列の第n項は次のように表されます。
$$a_n = \overbrace{666 \cdots 6}^{n}$$
これを分解すると、
$$a_n = 6 \times \overbrace{111 \cdots 1}^{n}$$
$$= 6 \times (1 + 10 + 100 + \cdots + \overbrace{100 \cdots 0}^{n桁})$$
$$= 6 \times (1 + 10 + 10^2 + \cdots + 10^{n – 1})$$
ここで、括弧の中は、初項 1、公比 10、項数 n の等比数列の和ですので、
$$a_n = 6 \times \frac{1 \times (10^n – 1)}{10 – 1}$$
$$= \frac{2}{3}(10^n – 1)$$
以上、等比数列の和についての考え方と、その和を求める公式についてでした。
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