Table of Contents
前回は等差数列とその一般項について解説しました。
今回は、等差数列のすべての項の和を求める方法と、その公式について解説します。
等差数列の和
例えば、初項 2、公差 7、末項 72 の数列があるとします。
$$2, 9, 16, \cdots , 58, 65, 72\tag{1}$$
この数列に含まれる項をすべて足した数を知りたいとき、地道に数えることもできますが、結構大変です。
そこで、数列の特徴を使って簡単に計算できないか考えてみます。等差数列をよく見てみると、項数が $l$ である数列では、以下の法則が成り立つことがわかります。
(このとき、末項は $a_l$ と書けます)
$$a_1 + a_l = a_2 + a_{l-1} = a_3 + a_{l-2} = \cdots$$
つまり、初項と末項の和は、第2項と末項の一つ前の項を足した数値を同じであり、同様に第3項と末項の2つ前の項を足した数値も同じです。これが項の数だけ成り立ちます。
実際に上の数列(1)で確かめてみると、この数列の項数は 10 ですので、$l = 10$ として考えることができます。
$$a_1 + a_{10} = 2 + 72 = 74$$
$$a_2 + a_9 = 9 + 65 = 74$$
$$a_3 + a_8 = 16 + 58 = 74$$
$$\cdots$$
したがって、このようにすべての項を足していけば、数列の和は以下のように計算できます。
$$74 + 74 + 74 + 74 + 74 = 370$$
このとき、2つの項を足して1つにするため、項の数は半分になっていることに注意してください。
等差数列の和の公式
前述の事実を一般化すると、以下の公式が導き出せます。
初項 $a_1$、公差 $d$、末項 $a_l$、項数 $n$ の等差数列の和を $S_n$ とすると、以下の公式が成り立つ。
$$S_n = \frac{1}{2}n(a_1 + a_l)\tag{☆}$$
前述の通り、項数が半分になるため $\frac{1}{2}$ をかけています。
この公式(☆)を使って、等差数列の和を求める以下の練習問題を解いてみましょう。
練習問題1
答え
末項 $a_l$ の値は、前回説明した等差数列の一般項の式から、
$$a_l = a_1 + (n – 1)d = 30 + (16 – 1) \times -8 = 30 – 120 = -90$$
公式(☆)に、この結果と問題文の値を代入すると、
$$S_n = \frac{1}{2} \times 16 \times (30 – 90) = -480$$
等差数列の部分和の公式
公式(☆)は、数列の最初から最後までの項の和を求める公式でした。
しかし、場合によっては数列の一部分だけ(初項から第n項までなど)の和を求めたいことがあります。
このための公式は、公式(☆)を変形することで求めることができます。もう一度公式(☆)を見てみましょう。
$$S_n = \frac{1}{2}n(a_1 + a_l)\tag{☆}$$
ここで、末項 $a_l$ は、以下のように書けます。
$$a_l = a_1 + (n – 1)d$$
なので、これを式(☆)に代入します。
$$S_n = \frac{1}{2}n\{a_1 + a_1 + (n – 1)d\}$$
$$S_n = \frac{1}{2}n\{2a_1 + (n – 1)d\}\tag{□}$$
これで、等差数列の部分和を求める公式(□)が導き出せました。
これを使って、以下の練習問題を解いてみましょう。
練習問題2
$$-15, -7, 1, 9, 17, \cdots $$
答え
この数列の公差 $d$ は 8 です。したがって、式(□)より、
$$S_n = \frac{1}{2} \times 12 \times \{2 \times -15 + (12 – 1) \times 8\}$$
$$S_n = 6 \times (-30 + 88) = 6 \times 58 = 348$$
以上、等差数列の和を求めるための考え方と公式についてでした。次回は等差数列の練習問題とその解説です。