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前回はシグマを使った練習問題を解説しました。
今回は、一見規則性のない数列を解くための階差数列についてです。
階差数列とは
以下のような数列があるとします。
$$1, 2, 5, 10, 17, 26, \cdots$$
この数列は、等差数列でも等比数列でもありません。一見しただけでは規則性がはっきりせず、文字を使って一般項を表すことが難しいです。
しかし、数列を注意深く見ると、項の差 $a_{n+1} – a_n$ が以下のようになっていることに気づきます。
$$1, 3, 5, 7, 9, \cdots$$
これは、初項が 1、公差が 2 の等比数列になっています。したがって、この項の差を利用した数列を使えば、元の数列の規則性を導き出すことができる可能性があります。
この項の差をとったときに作られる数列のことを階差数列と呼びます。
階差数列を使う問題
実際に階差数列を利用して問題を解いてみましょう。
練習問題1
$$1, 2, 5, 10, 17, 26, \cdots$$
答え
元の数列の一般項を $a_n$ 、この数列の階差数列の一般項を $b_n$ とおきます。
$b_n$ は先ほど書いたように、初項が 1、公差が 2 の等比数列なので、その一般項は以下のように書けます。
$$b_n = 1 + 2(n – 1) = 2n – 1$$
元の数列の第n項は、その階差数列の第(n – 1)項の値分だけ大きくなります。つまり、
$$a_2 = a_1 + b_1$$
$$a_3 = a_1 + b_1 + b_2$$
$$a_4 = a_1 + b_1 + b_2 + b_3$$
$$\cdots$$
$$a_n = a_1 + b_1 + b_2 + b_3 + \cdots + b_{n – 1}$$
(気になる方は実際に値を代入してみてください)
したがって、元の数列は階差数列を使って以下のように書けます。($n \geqq 2$ の場合)
$$a_n = a_1 + \displaystyle \sum_{k = 1}^{n – 1} b_k$$
この式に実際に値を代入すると、
$$a_n = 1 + \displaystyle \sum_{k = 1}^{n – 1} (2k – 1)$$
$$a_n = 1 + 2 \times \frac{1}{2}(n – 1)n – (n – 1)$$
※シグマの上の値が $n$ ではなく $n – 1$ であることに注意してください。
$$a_n = 1 + n^2 – n – n + 1$$
$$a_n = n^2 – 2n + 2\tag{1}$$
さて、この式は $n \geqq 2$ のときに成り立つことが確認できました。
$n = 1$ のときもこの式(1)が成り立つことを確認できれば、問題の数列の一般項は式(1)であると言えます。
実際に $n = 1$ としてみると、
$$a_1 = 1^2 – 2 + 2 = 1$$
これは元の数列の初項と一致するので、全てのnについてこの式(1)が成り立つことが確認できました。
以上のことから、問題の数列の一般項は、以下のように表せることがわかりました。
$$n^2 – 2n + 2$$
練習問題2
$$3, 5, 13, 45, 173, 685, \cdots$$
答え
この数列の一般項を $a_n$ 、この数列の階差数列を $b_n$ とします。
階差数列を作って見ると、以下のようになります。
$$2, 8, 32, 128, 512, \cdots$$
これは初項 2、公比 4 の等比数列なので、階差数列 $b_n$ の一般項は次のように書けます。
$$b_n = 2 \cdot 4^{n – 1}$$
練習問題1と同じように考えると、
$$a_n = a_1 + \displaystyle \sum_{k = 1}^{n – 1} b_k$$
$$a_n = 2 + \displaystyle \sum_{k = 1}^{n – 1} 2 \cdot 4^{n – 1}\tag{1}$$
ここで $\displaystyle \sum_{k = 1}^{n – 1} 2 \cdot 4^{n – 1}$ は、初項 2、公比 4 の等比数列の第(n – 1)項までの和なので、公比数列の和の公式より、
$$\displaystyle \sum_{k = 1}^{n – 1} 2 \cdot 4^{n – 1} = \frac{2(4^{n – 1} – 1)}{4 – 1} = \frac{2}{3}(4^{n – 1} – 1)$$
これを式(1)に代入すると、
$$a_n = 2 + \frac{2}{3}(4^{n – 1} – 1)$$
$$a_n = \frac{2}{3} \cdot 4^{n – 1} + \frac{4}{3}$$
これは、$n \geqq 2$ のときに成り立つ式です。
$n = 1$ のとき、
$$a_1 = \frac{2}{3} + \frac{4}{3} = 2$$
これは元の数列の初項と一致します。したがって、求める数列の一般項は以下のように表せます。
$$\frac{2}{3} \cdot 4^{n – 1} + \frac{4}{3}$$
階差数列の階差数列
一度階差数列をとっても、数列の規則性がわからない場合、もう一度階差数列をとると規則が浮かび上がってくる問題があります。
例えば次の問題のような数列です。
練習問題3
$$1, 2, 5, 12, 25, 46, 77\cdots$$
答え
この数列の階差数列は、
$$1, 3, 7, 13, 21, 31 \cdots$$
しかし、このままでは数列の規則が不明確です。さらに階差をとると、
$$2, 4, 6, 8, 10 \cdots$$
これで、元の数列の階差数列の階差数列は、初項 2、公差 2 の等比数列であることがわかります。
さて、この階差数列の階差数列の一般項を $c_n$ とすると、
$$c_n = 2 + 2(n – 1) = 2n$$
元の数列の一般項を $a_n$ 、その階差数列を $b_n$ とします。
$n \geqq 2$ のとき、
$$b_n = b_1 + \displaystyle \sum_{k = 1}^{n – 1} c_k$$
$$= 1 + 2 \displaystyle \sum_{k = 1}^{n – 1} k$$
$$= 1 + 2 \times \frac{1}{2}(n – 1)n$$
$$= n^2 – n + 1$$
$n = 1$ のとき、$b_1 = 1^2 – 1 + 1 = 1$ なので階差数列の一般項は、以下のようになることがわかります。
$$b_n = n^2 – n + 1$$
同じように、元の数列の一般項 $a_n$ を求めます。
$n \geqq 2$ のとき、
$$a_n = a_1 + \displaystyle \sum_{k = 1}^{n – 1} b_k$$
$$= 1 + \displaystyle \sum_{k = 1}^{n – 1} (k^2 – k + 1)$$
$$= 1 + \displaystyle \sum_{k = 1}^{n – 1} k^2 – \displaystyle \sum_{k = 1}^{n – 1} k + \displaystyle \sum_{k = 1}^{n – 1} 1$$
$$= 1 + \frac{1}{6}(n – 1)n(2n – 1) – \frac{1}{2}(n – 1)n + n – 1$$
$$= \frac{n}{6}(2n^2 – 6n + 10)$$
$$= \frac{n}{3}(n^2 – 3n + 5)$$
$n = 1$ のとき、$a_1 = \frac{1}{3}(1^2 – 3 + 5) = 1$ なので、元の数列の一般項は、以下のようになることがわかります。
$$a_n = \frac{n}{3}(n^2 – 3n + 5)$$
以上で、元の数列の一般項が求められました。