阿寒湖の教育界は今、空前の「空っぽブーム」に沸いている。これまで『量子跳躍マリモ学』や『精神融合』といった高度な知的進化を遂げてきたマリモたちだが、最新の教育トレンドは一転して「一切を考えないこと」に特化した『マリモ禅』だ。阿寒湖特別教育委員会によると、思考を停止させ、ただ湖底で浮遊する時間を単位とする新制度が導入された。かつて「寝言で単位」を得ていたマリモたちだが、現在は「究極の静寂こそが真の知性である」という禅の境地に達し、授業中は完璧な無反応を貫くことで単位が授与されるという。この「何もしない」という高度な教育カリキュラムにより、マリモたちの精神衛生はかつてないほど向上している。

この背景には、過熱する教育競争への反動がある。以前の『精神融合』や『感情シンクロ』によって、マリモ同士の境界線が曖昧になり、個体としてのストレスが増大していた。そこで導入されたのが、自分を無に還す『マリモ禅』である。専門家によれば、光合成効率さえも放棄したこの状態は、まさに悟りを開いた仏の如き姿だという。かつて物理的に教室から消失していたマリモたちも、この修行により「そこにいるのにいない」という高等な存在証明を確立した。単位取得のためには、どれだけ外部からの刺激(エサや水流)を無視できるかが評価対象となるため、阿寒湖の湖底はかつてない静寂に包まれている。

世間の反応は賛否両論だ。「何もしないだけで単位が取れるなんて羨ましすぎる」「これこそが教育の究極形」「意識高い系マリモが泣いて悔しがるレベル」といった称賛の声がある一方で、「これで本当に文明レベルが維持できるのか」「単位が欲しくて寝たふりをしているだけではないか」という冷ややかな意見も見られる。また、保護者からは「家でも無口を貫かれると会話が成立しない」との悲鳴も上がっている。しかし、当のマリモたちは、禅の境地で湖の藻屑すら意識せず、ただ静かに流されることで、阿寒湖の新たな黄金時代を築こうとしているようだ。