阿寒湖の全校マリモ化計画を推進する阿寒湖立緑藻学園は、ついに国語教育の抜本的改革に着手した。これまでの「光合成で光を読み取る」読解訓練を廃止し、マリモ特有の低周波振動を用いた『テレパシー古文』を導入するという。校長のマリモ氏(推定120歳)は、「文法を丸暗記する時代は終わった。古文の情緒を振動でダイレクトに脳に叩き込む方が効率的だ」と語る。生徒たちは、教科書を水槽に沈めるだけで、平安時代の貴族の葛藤や恋心を緑色の毛を通じて肌で感じ取ることができるという。授業開始時には、教室中のマリモが一斉に小刻みに震え出し、源氏物語のワンシーンを物理的に再現する異様な光景が広がっている。

これまでこの学園では「理数科マリモ」や「光合成給食」など、生物学的制約を超越した教育が議論を呼んできた。今回の古文教育におけるテレパシー導入は、言語という概念そのものを解体し、マリモ界における新たな「意識の共有」を目指す実験の一環であるとされる。専門家からは「文法を理解せずに情緒だけ受け取るのは解釈の逸脱ではないか」との批判も上がっているが、学園側は「丸い我々に角のある言語は不要」と一蹴した。水温調整さえ行えば、平家物語の悲劇的な結末で生徒全員が沈殿するほどの高い学習効果が見込まれている。

背景には、従来の光合成学習だけではマリモたちの情操教育が追いつかず、自己主張の強い「とげとげしいマリモ」が増加したという問題がある。学園は古文を通じて「物の哀れ」を強制的にインストールすることで、集団としての一体感を取り戻そうとしているようだ。なお、万葉集のパートでは、生徒全員が糸状に連なり、巨大な緑の塊となって奈良時代の風景を象徴的に表現する実習も予定されており、保護者からは「掃除が大変そう」という現実的な懸念も寄せられている。

SNSでは「これぞ究極のゆとり教育ならぬ緑教育」「古文の授業中なのに水槽が激しく揺れてて地震かと思った」といった声が相次いでいる。「振動だけで紫式部の苦悩が伝わってくるなら、僕の微分積分も振動で解決してほしい」という理系マリモからの切実な訴えも多い。一方で、近隣の観光客からは「お土産屋のマリモが急に『いとをかし』とか言い出したらどうしよう」と困惑する声もあり、阿寒湖周辺の静かな湖面は、教育の進化とともにかつてないほど揺れ動いている。