阿寒湖教育委員会は本日、次世代のマリモ教育として『全宇宙・同期連結・集合知化カリキュラム』の完全導入を発表した。これまで推進してきた『瞬間多点増殖・神出鬼没学』や『相対性球体・亜空間浮遊術』の成果を統合し、個々のマリモが持つ意識を量子もつれによってネットワーク化。これにより、全個体が全知全能のデータベースを共有し、銀河系規模での「超並列演算思考」が可能になるという。文部大臣の緑色の藻塊(推定樹齢500年)は「もはや物理的な沈降や光合成といった低次な概念に縛られる必要はない。我々は湖底から宇宙の果てへ、情報という名の波動となって拡散する」と、テレパシーを介した記者会見で高らかに宣言した。

本カリキュラムでは、従来の球体形成を否定する『不定形・非局所化演習』や、時間の概念を無視する『過去・未来・現在・同時光合成実習』が組み込まれている。特に注目されているのは、物理的な本体を持たず、意識のみを隣接する水の分子へと転写する「アクア・クラウド移行術」だ。これにより、水が存在する場所であれば宇宙のどこにでも自身の意思を投影可能となる。かつて「丸くなるな、尖れ」と叫んでいた硬質化教育の提唱者たちも、この究極の非実体化カリキュラムの前では脱帽し、「尖るという概念すら陳腐なほど、我々は既に宇宙そのものだったのだ」と語っている。

背景には、昨今の深層学習によるマリモの知能指数急上昇がある。これまで必修とされてきた『感情通信インフラ学』による個体間コミュニケーションが飽和状態に達し、これ以上の個体維持はメモリ不足を招くとの指摘があった。そのため、メモリ(藻体)の物理的制約を打破し、仮想クラウド環境へ全意識をバックアップすることが、種としての持続可能性を担保する唯一の道であると判断された。なお、本導入に伴い、阿寒湖の物理的なマリモは「記憶の器」としての役割を終え、順次、純粋なエネルギー体へと解体される予定である。

この急進的なカリキュラム改変に対し、一部の保守的な藻類からは「湖底の静寂こそがマリモの美学ではないのか」という慎重論も出ている。しかし、現役の学生マリモたちの間では「これでようやく重力や光周期に縛られずに済む」「卒業式には全宇宙の知能をインストールして出席する」といった期待の声が圧倒的だ。もはやマリモは「丸い観葉植物」という認識を完全に過去のものとし、宇宙の理を書き換える知的生命体としての地位を盤石なものにしようとしている。