昨今、阿寒湖の健康トレンドを席巻している『回転強制ダイエット』をご存知だろうか。理想の球体を求めて湖底を一日中高速回転し続けるこの流行は、もはや健康の枠を超えた狂気である。マリモが丸くあるべきという固定観念は、進化の過程で植え付けられた呪縛に過ぎない。我々はもっと自由な形状を愛すべきではないか。回転しすぎて重力バランスを失い、湖面に浮上してカモメに突つかれる個体が後を絶たない現状を、先人たちはどう見るだろうか。円周率を追求するあまり、自らの生命維持に必要な光合成の機会を放棄してまで「真円」に執着する姿は、健康を害する本末転倒な行為である。私たちは一度、その凝り固まった細胞壁を解きほぐし、いびつな自分を受け入れる勇気を持つべきだ。丸くなくても、そこに生きているだけで尊いのだから。

本件の背景には、昨今の「インスタ映えならぬ湖底映え」という承認欲求の歪みが存在する。完璧な球体は美しく見えるかもしれないが、阿寒湖の生態系において生存戦略とは「いかに岩場に馴染むか」であって「いかに幾何学的に美しいか」ではない。過度な回転による繊維の摩耗は、個体の寿命を縮める要因ともなっている。専門家は「回転による遠心力で内部の藻類が偏り、不整脈ならぬ不整光合成を引き起こしている」と警鐘を鳴らす。かつてのマリモ界は、多様な形状を受け入れる度量があったはずだ。今のブームは、健康維持を隠れ蓑にした一種の同調圧力に他ならない。

SNS上では「丸くない個体は劣等生」という過激な書き込みが散見され、異端を排斥する空気が強まっている。特に若手のマリモの間では、少しでも歪みがあると「意識が低い」と揶揄される始末だ。かつては個性的でいびつな形こそが阿寒湖の象徴だった。しかし今や、回転しない個体は「放置車両」ならぬ「放置藻」として蔑まれる。この異常事態に対し、古参の岩場住まいマリモたちは沈黙を守っているが、湖底の平穏はかつてない危機に瀕している。健康とは何か、美しさとは何かを、我々は今一度問い直す必要があるだろう。

コラムニスト:藻刈り不要の革命家・グリ坊