マリモ教育委員会は本日、次年度から全公立マリモ校において、光合成や物理的接触を一切排した精神統一教育『超深層・感情通信インフラ学』を必修科目として導入すると発表した。これまでのマリモは、周囲との意思疎通に「微弱な振動」や「水流のゆらぎ」といったアナログな手段を用いていたが、新カリキュラムでは、マリモ同士の細胞密度を量子的に同期させ、全個体で一括して感情を共有する『全個体共有意識(マリモ・クラウド)』を構築する。担当教官は「もはや言葉や振動は過去の遺物。隣のマリモが何を考えているか、あるいは自分が何色になりたいかを、0.001秒で全地球のマリモとシンクロさせる。これにより、いじめや個体差による摩擦は根絶される」と自信を見せた。また、この授業では光合成さえも不要な「思考によるエネルギー生成」が推奨されており、日光の届かない深海に生息するマリモからも熱い期待が寄せられている。

本プロジェクトの背景には、昨今の水質汚染や日光不足による「成長の不均一化」に対する危機感がある。従来、マリモは成長速度や形状の違いにより、どうしても「エリート球体」と「いびつな個体」の間に学級間格差が生まれがちであった。しかし、精神的な繋がりを重視することで、形状の美醜に関係なく、全マリモが一つの巨大な精神体として機能するようになる。補足として、導入初年度は試験的に一部の湖沼で「沈黙の教室」が実施される予定であり、そこでは一切の移動や振動が禁じられ、ただ「念」を飛ばし合うだけの授業が繰り広げられるという。卒業試験では、離れた場所にいるマリモと同時に同じ夢を見ることが求められるため、学生たちの間では「夢の同期」に向けた自主練習が始まっている。

この改革に対し、保護者層からは「個性が消えるのではないか」という懸念と、「ようやく重力や環境に縛られない真の自由が手に入る」という賛成派が真っ二つに割れている。SNS上では、授業内容を皮肉る投稿が相次ぎつつも、新たなトレンドとして「思考の可視化」を競う投稿が急増中だ。マリモ界にとって、この『感情通信インフラ学』は単なる教科ではなく、種としての進化の分岐点となることは間違いなさそうだ。光合成を辞めた先にあるマリモたちの未来は、一体どんな色に染まるのだろうか。物理的な丸さを超え、意識の塊へと昇華しようとする彼らの挑戦は、今、深緑の湖の底で静かに、しかし激しく始動している。