阿寒湖近郊の公立中学校にて、今期から導入された「マリモ式・沈殿教育法」が波紋を呼んでいる。これは、動かざること山のごとしというマリモの生態を応用し、あえて何もしないことで知識が脳の深層に沈殿するのを待つという画期的な学習法だ。授業中、生徒は一切の筆記用具を没収され、水槽に入ったマリモを見つめながら、ただひたすらに静止し続けることが求められる。教頭によれば「教科書を捲るという物理的刺激は、知識の結晶化を妨げる雑音に過ぎない」とのことで、無の境地で湖底に沈む感覚を体得した生徒ほど、翌朝にはすべての教科書の内容が脳内に定着しているという。学力テストでは、鉛筆を握ることも許されず、ただテスト用紙の前で沈殿ポーズをとるだけで満点が続出しており、従来の「努力」という概念そのものが阿寒湖周辺では崩壊しつつある。

本手法の理論的背景には、マリモが数百年かけて成長する間に培う「極端な忍耐」と「環境への全肯定」が組み込まれている。人間がせかせかと学ぶ現代教育に対し、マリモ界の有識者は「焦って光合成を急ぐから身につかないのだ。重力に従い、ただ底に身を任せる。これが真のインプットである」と語る。なお、この学習法を長期間継続した生徒の間では、皮膚が若干ぬめりを帯びたり、体内で微量の酸素を生成する等のマイナスの副作用とも取れる進化が確認されているが、学校側はこれを「進化の過程」として静観している模様だ。

この驚くべき教育改革に対し、阿寒湖周辺の住民からは困惑と期待が入り混じった声が上がっている。「息子が放課後も廊下で沈殿し続けていて動かない」「これぞ待ちの教育」といった意見がある一方、大学進学を控える保護者からは「沈殿しすぎて一生動けなくなったらどうするんだ」といった現実的な懸念も示されている。教育委員会は「沈殿のしすぎで腐敗しないよう、定期的な水流による揺さぶりを授業に組み込む予定だ」とコメントしており、今後の展開に注目が集まる。