阿寒湖教育委員会は、マリモたちの高度な知性を育むため、光合成の明滅パターンで文章を綴る『藻文(そうぶん)』の習得を義務化しました。この画期的な試みである『第一回・光合成文学賞』では、生徒たちが懸命に光を明滅させ、詩情あふれる叙事詩を披露しました。しかし、審査の最終局面で「あまりに抽象的すぎて、ただの信号機に見える」という致命的な指摘が相次ぎ、受賞作がすべて「点滅の激しいSOS」と誤認され、近隣の観光客がレスキュー隊を呼ぶ騒ぎに発展。教育委員会は「情緒を伝えるつもりが、救助を要請してしまった」と釈明し、今後は感情表現の明るさを抑制する『省エネ叙情法』の導入を急ぐ構えです。

本来、マリモにとって言葉とは、沈殿する速度や藻糸の揺れで伝える身体言語が主流でした。しかし、昨今の効率重視の社会において「短時間でいかに多くの光情報を放つか」が重視されるようになり、今回の文学賞が企画されました。背景には、水底で沈黙を守る旧来型のマリモと、光ファイバーのように情報を点滅させる次世代型マリモとの間に埋めがたい「明暗の格差」が広がっているという教育課題があります。専門家は、単なる情報の伝達手段としての光合成ではなく、沈黙という余白を含めた「間」の文化を再定義する必要があると説いています。

このニュースを受け、水底の住民たちからは賛否両論が巻き起こっています。一部の教育熱心な親からは「光らせるスキルを磨くことは、将来の深海通信士への登竜門だ」と歓迎する声が上がる一方で、伝統的なマリモ愛好家からは「光らせて目立つことだけが知性ではない。泥に埋もれてこそ学べる真理があるはずだ」と反発の声も上がっています。また、実際にSOSと勘違いされた生徒からは「自分の感性を信じていたのに、救助船が来て恥ずかしくて炭酸ガスを放出してしまった」といった切実な悩みも寄せられており、マリモ教育界における「表現の自由と公的秩序」の議論は今後ますます激化しそうです。