阿寒湖小学校は今期より、マリモにとって宿命の天敵である「マツモ」の接近を未然に察知し、物理的に距離を置くための特殊カリキュラム『異種間・接触回避学』を全校必修化した。これまで、成長過程でマツモの柔らかな触手がマリモの球体に絡まり、栄養を奪われるだけでなく「異物との同化」というアイデンティティ崩壊の危機に直面する個体が後を絶たなかった。本講座では、水流のわずかな揺らぎからマツモ特有の粘着質を感知するセンサー機能の強化と、万が一絡まった際に体液(細胞質)を一時的に収縮させて物理的な接点を最小化する「脱・密着戦術」が伝授される。担当講師は「我々にとって接触は死を意味する。丸さを保つことは、他者の侵入を拒むことと同義である」と語り、今後はマツモの隙間を縫うような高度な回避ルート設定の実技演習も行う予定だ。

マツモは繁殖力が強く、マリモが好む水深と重なる場所で大増殖するため、マリモ愛好家や研究者からは長年悩みの種とされてきた。特に春先の水温上昇期にはマツモの茎がマリモに絡みつき、そのまま浮遊して岸辺へ運ばれてしまう「強制連行事故」が多発している。この授業は、マリモたちが集団で水流を操作し、マツモの生息域を局所的に真空状態にして締め出すという高度な防衛術の一環として立案された。阿寒湖小では「丸こそ正義」という学是のもと、他者との距離感を物理的かつ知的に制御する教育が、生存戦略の要として重要視されている。

SNSでは、「絡まって変形させられるのはトラウマ」「あのベタベタした触手は悪夢」といった共感の声が相次いでいる。一方で、一部の過激派からは「マツモとの共生こそが進化の鍵ではないか」という異論も出ているが、現場の教員や生徒からは「触れ合うだけで光合成効率が落ちる」と一蹴されている。保護者からは「これでもう、朝起きて鏡を見たらマツモに絡まっていたという悲劇はなくなるはず」と、今回の授業に対する期待が非常に高まっているようだ。