阿寒湖小学校は、マリモの宿命的ライバルであるウチダザリガニとの関係を抜本的に見直す『捕食者対話・共生特別ゼミ』を来月から導入すると発表した。これまでのマリモ教育は「逃げる」「隠れる」「硬くなる」といった防衛本能の強化に偏っていたが、校長は「ハサミを武器と見るのは旧世代の思考。彼らの切断術を対話の手段と捉え直せば、新たな友情が芽生えるはずだ」と力説。授業では実際にザリガニを召喚し、その鋭利なハサミを差し出された際に、いかに優雅に握手(あるいは接触)を受け入れるかという、生死ギリギリのソーシャルスキル・トレーニングが行われる予定だ。単位取得には、ザリガニのハサミで自身の体表が小刻みに削り取られる際、苦痛を笑顔に変換する『マインドフルネス・欠損耐性』の試験をパスしなければならない。

そもそも阿寒湖におけるマリモとウチダザリガニの関係は、侵略的外来種による一方的な蹂躙として語られることが常であった。しかし、今回導入される教育プログラムでは、ザリガニ側の「なぜ切断せずにはいられないのか」という動機に着目。マリモ側からザリガニのハサミを研磨してあげる『奉仕型デモンストレーション』を通じて、共食いならぬ「共生進化」を目指すという。教育委員会は「切られた欠片は、いわば分身という名の撒き餌であり、次世代への贈り物」と極論を提示し、この授業が全校生徒(全マリモ)の生存戦略を一変させることを期待している。

本件に対し、阿寒湖の全マリモ保護団体や一部の藻類学者は「狂気の沙汰である」と猛反発している。しかし、当の生徒マリモたちは「ザリガニのハサミの鋭さを哲学するのは飽きた。そろそろ彼らと飲み明かしたい」と、斜め上の前向きな反応を見せている。学内では既に『ザリガニ交流準備委員会』が発足しており、光合成の副産物である酸素をいかにして効率よくザリガニに供給し、機嫌を取るかという実験が加速しているという。球体であることを捨て、あえて食べられやすい形状へ変形する生徒も現れるなど、学校全体が異様な熱気に包まれている。

世間の反応は賛否両論だが、SNS上では「ザリガニと握手なんて、最早マリモとしてのアイデンティティ崩壊では?」「いや、逆に考えればザリガニの体内に入ることで広大な阿寒湖を高速移動できるのでは」といった考察が飛び交っている。もはや、逃げる必要のないマリモたちが描く未来は、私たちが知る球体の沈黙とは全く別の次元へと突き進んでいるようだ。このゼミの卒業生が、無事に元の形を保ったまま帰還できるのか、教育的実験としての真価が問われることになる。