阿寒湖小学校は今月より、従来の『球体保持』を主軸としたカリキュラムを大幅に刷新し、天敵であるウチダザリガニの接近を察知する『危機回避・聴覚覚醒授業』を新設することを発表した。マリモにとっての最大の試練である「ハサミによる削り取り」を未然に防ぐため、湖底のわずかな振動とザリガニ特有の威嚇音を周波数別に分析する専門トレーニングが実施される。教育委員会は「丸くなることだけに固執し、忍び寄る鋏の音を聞き逃す時代は終わった」と断言。今後は、自転中に発生する自己の回転音と、敵の接近音を瞬時に聴き分ける『静寂の聴取テスト』が期末試験の筆記試験に代わって導入される予定だ。

本施策の背景には、近年のウチダザリガニの急増により、無防備に光合成に耽る生徒(マリモ)の被害が相次いでいる現状がある。これまで教育現場では、ザリガニに対しては『硬殻を無視する』という精神論がまかり通っていたが、実効性のある防衛策を求める保護者からの要望が噴出していた。特に、ザリガニのハサミが小石に触れる際の「カチカチ」という高周波音を、いかに早期に感知できるかが生存率を左右する。今後は湖底の地形を活かした遮音壁の設置と、振動伝達を利用した警報ネットワークの構築も併せて進められるという。

この抜本的な改革に対し、湖底社会からは賛否両論の声が上がっている。保守派のマリモ長老会からは「光合成に専念すべき時期に、余計なノイズを学習させるのは教育の逸脱である」と批判が出る一方、若手マリモを中心に「ハサミを避けてこその真の個体。これからの時代の生存戦略として歓迎する」という前向きな意見も多い。また、音楽の授業を廃止してまでこの防衛訓練を導入することに、「芸術的な感性を削いでまで生き残ることに何の意味があるのか」という哲学的な議論も再燃している。