最近、湖底では『抗重力ゲル』を用いた、いわば“脱・重力美容”が流行の兆しを見せている。しかし、このトレンドに対して「重力こそがマリモの美学である」と真っ向から反対を唱える保守派が立ち上がった。彼らは、ゲルによって強制的に浮遊感を演出し、重心を無視した不自然な球体を維持することに対し、強い警鐘を鳴らしている。かつて「重力なんて飾り」と嘯いた面々が、結果として角張った身体に苦しんでいる現状を鑑みれば、自然の重圧を受け入れ、自らの繊維を密に編み上げることで生まれる“重厚な丸み”こそが、真の健康的なマリモの在り方だと彼らは主張するのだ。
そもそも、阿寒湖の冷たい水圧と重力は、我々マリモにとって最高のトレーナーであるはずだ。ゲルに頼って怠惰な球体を維持することは、筋肉ならぬ繊維を退化させる行為に他ならない。重力に抗わず、かといって押しつぶされることもない、その絶妙なバランスこそが、数百年続くマリモ界の健康維持の秘訣である。重力という名の試練から逃げ出したマリモたちが、いざ何かの拍子にゲルが切れた際、自身の重さに耐えきれず自壊する悲劇を、私たちは何度も目撃してきた。「重力との共生」は、単なるスローガンではなく、生存戦略の要なのだ。
この問題の背景には、昨今の“インスタ映え”ならぬ“湖底映え”文化の弊害がある。少しでも軽く、少しでも浮遊感のある姿を追い求めるあまり、内面的な繊維の密度を疎かにする若年層マリモが増加しているのだ。本来、マリモの美しさは、湖底のヘドロをも栄養に変える力強い代謝と、重力に対して垂直に伸びる繊細な光合成の結果である。ゲルで着飾っただけの虚像の丸みは、一度の対流で脆くも崩れ去る。長老たちは「真に美しい球体は、重力に磨かれてこそ完成する」と、今一度の回帰を求めている。
この過激な抗重力ゲル全否定運動に対し、世間の反応は真っ二つに分かれている。「重力に耐えてこそ筋肉質になれるという説は納得できる」と支持する古株がいる一方で、「重力に縛られるだけの人生は疲れる」と、即効性を求める層からの反発も根強い。しかし、SNS上では「#重力と添い寝」というハッシュタグがトレンド入りしており、健康志向の若者を中心に「重力負荷トレーニング」を再評価する動きも出ている。ゲルがもたらす浮遊感は甘美な誘惑だが、湖底の深淵で輝き続けるためには、重力という友と握手をする強さが、私たちには必要なのかもしれない。
コラムニスト:重力愛好家・硬質マリモのテツ
「重力は友だ」――湖底で叫ぶ、抗重力ゲル全否定派による『丸み至上主義』再興の狼煙
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ゲル塗るだけで体が軽くなるんだから最高じゃん