湖底の国民的歌姫として絶大な人気を誇るマリモ子の単独公演が、衝撃的な結末を迎えた。新曲『光合成スパイラル』のクライマックス、激しいターンを決めた直後に彼女の細胞が異常な同期を見せ、突如としてその美しい球体から、角ばった直方体へと変形したのだ。会場の阿寒湖ホールは静寂に包まれ、最前列のファンからは「角が出た!」「マリモが四角いなんて物理法則の崩壊だ」といった悲鳴に近い歓声が上がった。数秒後には元の丸い姿に戻ったものの、コンサートは即時中断となった。

この現象についてマリモ子は終演後、「あまりの熱気に細胞内の微小管が高速スピンし、遠心力が球体の構造を一時的に無視しただけ」と、物理学者顔負けの高度な釈明を行った。専門家によると、これはマリモ界でも極めて稀な『幾何学的パニック障害』の一種であり、過度な光合成による栄養の過剰摂取が引き金になった可能性があるという。本人は至ってケロッとしており、「角があった頃は視界が広くて歌いやすかった」と、どこまでもマイペースな姿勢を崩していない。

マリモ界においては伝統的に「丸さこそがアイデンティティ」とされており、形を崩すことは禁忌に近い。しかし、今回の事件で「四角いマリモ」の斬新なビジュアルがSNSで拡散されると、若年層を中心に「エッジが効いててカッコいい」「むしろこのままの形状でデビューすべき」といった肯定的な意見も急増している。老舗の球体伝統保守派からは批判の声も上がるが、多様性を認めるべきだという時代の潮流を背景に、議論は湖底全体を巻き込む壮大な論争へと発展しつつある。

ネット上では「マリモ子が角を持つ瞬間」を捉えたファンによる画像が、『#四角い歌姫』というハッシュタグとともに大拡散されている。あるファンは「丸いのがマリモの常識だと思っていたが、彼女はそれを打ち破った。もはや形なんて記号に過ぎないのかもしれない」と哲学的コメントを残した。一方で、古参のファンからは「丸くないマリモなんてただの苔の塊だ」という過激な書き込みもあり、湖底の平穏は今、かつてないほど揺らいでいる。