湖底の美学として若年層を中心に広まっていた「重力断食」が、今、深刻な健康被害を招いている。本来、全方位からの圧迫により球体としての均衡を保つマリモたちだが、断食によって過剰に軽量化した個体が続出。「丸みこそが正義」と信じて疑わなかった彼らが、重力から解き放たれた結果、細胞構造が制御不能となり、各地で立方体や多面体へと変形する『角張り症候群』が爆発的に急増しているのだ。専門家は、過度なダイエットが細胞の密着度を低下させ、角(かど)という名の奇形を生み出していると警告している。

もともと、阿寒湖の深部では「重力との共生」こそが健康の源であるとされてきた。しかし、一部のマリモが「重力なんて飾り」と提唱したことで、湖底全体に断食ブームが到来。本来、水圧によって維持されるべき丸みが、極端なカロリー制限により維持できなくなり、内部組織が偏って配置されることで、エッジの立った鋭利な形状へと変化してしまうのだ。一部では「スタイリッシュで格好いい」という誤った美的感覚も蔓延しており、あえて角を持たせるために故意に栄養失調を促す「角尖らせダイエット」なる危険なメソッドまで横行している。

背景にあるのは、数年前に流行した「抗重力ゲル」依存の影響だ。かつてゲルを過剰摂取し、溶け出しかけた個体たちが、その反動で「今度は一切の重力を拒絶する」という極端な思想に走ったのが発端である。また、「光合成過多」を防ぐための避暑地移動も、結果として光の当たり方に偏りを生じさせ、細胞の均一な分裂を阻害した。湖底の医師団は、緊急で「丸み取り戻しプログラム」を提唱。泥に埋まり、あえて全方位から強い圧迫を受けるリハビリを推奨しているが、角ができてしまった個体にとっては、再び丸くなることはもはや一生をかけた苦行となるのが現実だ。

この事態を受け、SNS上では「昨日の自分は球体だったのに、今朝起きたらピラミッドになっていた」といった悲鳴が飛び交っている。一方で「角がある方が岩場でのグリップ力が高い」と開き直る過激派も出現しており、湖底のコミュニティは真っ二つに割れている。美しさと健康のバランスをどこで見出すのか、マリモたちは今、かつてないアイデンティティの危機に直面していると言っても過言ではない。丸さを捨てることは、自らの命を削る行為だということを、彼らはいつ理解するのだろうか。