阿寒湖教育委員会は、次年度より全校必修科目として『深淵の闇・ナイトビジョン覚醒』を導入することを発表した。これまでのマリモ界の常識であった「太陽光に依存した光合成」を完全に捨て、漆黒の湖底で自ら体内発光を行う「自己完結型エネルギー変換」を学ばせる。従来の光合成教育では、曇天や冬期の光量不足により成長が停滞するという致命的な欠陥があった。新カリキュラムでは、細胞内のミトコンドリアを過激に励起させ、自らの内部で極小の電気信号を生み出すことで、外界の光源を一切必要としない完全なる「自立型発光体」への進化を促すという。初等部の実習では、全員が暗闇でピカピカと明滅し、湖底をクリスマスツリーのように照らすシュールな光景が目撃されている。
これまでマリモ界の教育は、光を求めて水面近くへ浮上する「上昇志向」が美徳とされてきた。しかし、近年の水温上昇や水質変化による「干からびリスク」を考慮し、あえて深淵へ留まる能力が生存戦略として重要視されるようになった。この科目の最終試験は「完全なる暗黒の中でのアイデンティティ保持」であり、外部からの刺激がない環境下で、いかにして自己の球体形状を保ち続けるかが問われる。開発チームのリーダーである長老マリモ氏は「光に頼る人生は卒業だ。今後は我々自身が湖底の星となる」と語り、教壇で眩いばかりの青白い光を放ちながら会見を締めくくった。
本件に対し、伝統的な光合成派からは「マリモの本質は太陽の恵みにある」と反発の声が上がっているものの、若手個体からは「これで曇りの日も堂々と休み時間中に進化できる」「親に光合成の成果を求められなくて済む」と熱狂的に受け入れられている。また、一部の専門家からは「このまま発光し続けると、夜釣りの人間に誤認されて釣り上げられるリスクがある」との懸念も示されており、保護者向けには『誤認捕獲防止・ステルスモード切り替え術』の特別講習も並行して実施される予定である。教育界は今、太陽の奴隷から脱却し、闇を支配する新時代の幕開けに揺れている。
なお、この進化の過程で、一部の生徒が誤って「発光ダイオード」のような規則的な点滅を始めた事例が報告されている。教育委員会はこれを「デジタル知性の芽生え」として好意的に受け取っており、今後はプログラミング教育との連携による、発光信号を用いた湖底通信網の構築も視野に入れているという。かつて太陽を追い求めた丸い意志は、今、漆黒の湖底で静かな革命の灯火を点そうとしている。
「光合成はもう古い」マリモ界、新必修『深淵の闇・ナイトビジョン覚醒』で自給自足の光エネルギーへ決別
0
胸が熱くなるな