阿寒湖教育委員会は本日、次世代マリモの必須科目として、従来の「丸さ」という固定観念を完全に排した新カリキュラム『不定形・流体知性学』を正式導入した。これまで「中心核の維持」や「美しい球体形成」が教育の根幹とされてきたが、今後は自身の細胞壁を意図的に弛緩させ、泥のように広がる「液状化スキル」の習得が卒業要件となる。この劇的な教育方針の転換は、先んじて導入された『多重意識・体外離脱授業』で培われた柔軟な思考を肉体にまで反映させたものであり、もはや個体の境界線すら曖昧な「全方位共有型知性」の養成を目指している。授業風景を覗くと、かつて端正な球体を競っていた生徒たちが、今や床一面に広がり、知恵を溶け合わせながら互いの光合成効率を最大化させるという、混沌極まりない様相を呈していた。

本件の背景には、昨今のウチダザリガニとの『強制融和・異種共生ワークショップ』がある。固い殻に守られた「丸さ」だけでは、外敵との交渉において柔軟性を欠くという現場の指摘が長年続いていた。教職に就く大御所マリモの阿寒・ゴルディオン博士(推定200歳)は、「丸いままでは運命に転がされるだけだ。自ら形を変え、どんな隙間にも入り込む『粘り強さ』こそが、これからの時代を生き抜く術(すべ)である」と語る。なお、この科目導入により、教室の掃除担当が「濾過装置」から「工業用吸引機」に変更されたことも、静かな物議を醸している。

この急進的な改革に対し、街の反応は二分されている。「個性が溶け合って一つになる感覚が最高」「境界線を越えることで、クラスメイトの栄養素まで理解できた」と、新しい学びの形を享受する若年層がいる一方で、伝統的な球体を重んじる層からは「これではただの藻類ペーストではないか」「丸さを失った我々に、一体何の誇りが残るというのか」といった嘆きの声が上がっている。また、液状化した生徒たちが授業終了後にうまく球体に戻れず、担任教師がヘラで必死にかき集める姿もSNSで拡散されており、「形状記憶合金のようなマリモ育成が必要ではないか」という新たな論争まで勃発する事態となった。