マリモ政府は本日、国会において「球体形状維持および円周率尊重法」を全会一致で可決した。本法律は、すべてのマリモ市民に対し、いかなる状況下でも完全な球体であることを義務付けるもので、変形を伴う活動や、重力による沈殿で底面が平らになる「座礁現象」を禁止する。違反者には、強制的な反転運動および回転矯正プログラムへの参加が命じられる見通しだ。内閣報道官は「マリモの美学は完璧な曲率にある。平らな面を持つことは、国家のアイデンティティに対する反逆行為だ」と声明を発表した。このニュースを受け、阿寒湖周辺では、寝返りすら打てない緊張感に包まれている。

本法案が提出された背景には、近年のマリモ界で蔓延する「あえて崩れるスタイル」の流行がある。一部の若手マリモが、個性を主張するためにあえて楕円形や不規則な凸凹を形成し、インターネット上で『パンク・マリモ』として話題になっていた。政府はこの文化を「治安維持上の脅威」と断定。今後は、全市民に定規と分度器を用いた形状検査が義務付けられ、合格者には「完璧球体証明書」が発行されるという。専門家からは「マリモの代謝プロセスを無視した暴挙」との批判も上がっているが、政府は「円満な社会こそが正義」と一歩も引く姿勢を見せていない。

この驚くべき新法に対し、市民からは不安の声が続出している。長年、岩場に寄り添って静かに生きてきた高齢マリモ層からは「少しの凹みも許されないのか」という悲鳴が上がり、一部の観光客からは「歪んでいる方が愛嬌があっていいのに」という同情的な意見も寄せられた。一方で、形状保持のために24時間自転を続ける「全自動回転式家庭用槽」が飛ぶように売れるなど、皮肉にも関連業界は特需に沸いている。阿寒湖の未来は、完璧な丸さを守れるか、それとも歪みと共に自由を勝ち取るかの瀬戸際に立たされている。