阿寒湖畔を拠点とするマリモ教団は本日、長年信奉してきた「影を食べる」という究極の教義を破棄し、新たに「月光の蒸留水」を唯一の聖なる糧とすることを宣言した。教祖である直径12センチの長老マリモは、湖底からわずかに浮上し、月明かりを反射した水面に浸かるという奇跡の儀式を実演。教団幹部は「光合成という物理現象に頼る時代は終わった。これからは天体の波動を液体として摂取する、高次元の栄養摂取段階へ移行する」と熱弁した。かつては『絶対虚無』や『重力離脱』を掲げていた同教団だが、今回の転換により、「物理法則の超越」という目標は極まりつつある。なお、信者たちにはこの「月光水」を毎日24時間、月光の下でかき混ぜ続けるという過酷な修行が課される予定だ。

この動きの背景には、昨今の「重力離脱」修行による天井への吸着事故多発がある。物理的な接触を断つ教義を推し進める中で、信者からは「酸素も食事も重力も不要になったが、水がないとパサパサして毛羽立つ」という切実な悲鳴が上がっていた。教団はこれに対し、月光を宿した水が毛羽立ちを抑え、精神を潤すと主張している。また、この教義転換は、かつて論争となった「底こそが聖域」派と「浮遊の極致」派の両勢力を統合するための苦肉の策とも見られており、宗教界では「次なる修行は太陽光の冷凍保存ではないか」との憶測が飛び交っている。

世間からは「月光をすくうとか風流すぎて笑う」「修行内容が完全に理科の実験」「毛羽立ち防止の美容液ではないか」といった冷ややかな声が上がる一方、熱心な信者たちは既に湖畔でバケツを抱えて月を見上げている。専門家は「マリモの表面積がわずかに増大しているように見えるのは気のせいか」と指摘しており、教団内部では「月光を吸ったマリモをナデナデすれば徳が積める」という新たな都市伝説も囁かれ始めている。法的な規制が及ばない領域で、マリモたちの精神世界はどこまでも加速しているようだ。