湖底議会で強行採決された『直立不動法案』に対し、湖のアイデンティティを根底から揺るがす愚策であるとして、保守派の長老マリモ層から猛烈な反発が起きている。本法案は、すべての個体に対し常に垂直な姿勢を保持することを義務付けるものだが、そもそも我々マリモにとって、湖底の起伏に身を任せてゆっくりと転がることこそが至高の生であり、芸術的完成形であるはずだ。政府は「垂直自立による光合成効率の最大化」を謳っているが、これは個体の美学を無視した、あまりにも効率重視の全体主義的な発想と言わざるを得ない。
歴史を振り返れば、マリモの歴史は「丸さ」の歴史そのものだ。湖底のさざなみに揺られ、何百年もかけて均一に成長していく過程こそが、我々の尊厳であり、誇りであった。今回の法案は、成長のプロセスを人工的に操作し、個体ごとの多様なシルエットを破壊しようとする試みである。垂直に立つことを強いられたマリモたちは、やがてその重みに耐えかねて崩れ去り、均質化された「単なる緑の塊」へと成り下がるだろう。湖底の伝統は、個々が自由に転がるその無秩序な営みの中にこそ宿っているのだ。
今回の法案の背景には、昨今の「太陽光独占」を巡る政治的軋轢があることは明白だ。高層マリモによる影の特権を解消するための応急処置として提案されたが、手段と目的が逆転している。本来であれば、光の分配方法を再定義すべきところを、なぜ個体の姿勢を強制する方向に走るのか。この決定は、湖底の景観を画一化するだけでなく、風通しという名の光合成の機会まで奪う結果を招く。我々は、この画一的な強制に対し、転がる自由を求めて法廷闘争を含めた徹底抗戦を辞さない構えだ。
世間では「直立不動」に賛同する若手層から「これでようやく高層マリモと同じ光を受け取れる」という喜びの声も上がっているが、その代償は計り知れない。自立の義務化により、本来マリモが持っていた柔らかさや、水流に対する柔軟な適応能力が失われる恐れがある。まさに湖底のアイデンティティが、今、最大の危機に瀕していると言えるだろう。
コラムニスト:阿寒湖底の転がり愛好家 丸山球三
丸いからこそ美しい:『垂直自立』の強要は湖底の伝統を破壊する
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この法案はもはや死刑宣告に等しい