最近、美容や健康の分野で「マリモの絞り汁」を摂取する『緑の血液』健康法がブームを巻き起こしている。しかし、これは単なる迷信を超えた「危険なバイオハザード」であると警鐘を鳴らす専門家が急増している。本来、阿寒湖の冷たい水中で静かに成長する藻類を、なぜ我々が粉砕し体内に取り込む必要があるのか。一部の熱狂的な信奉者は「体内で光合成を行えば疲労が消える」と主張するが、人間の細胞に葉緑体は存在しない。無理やり緑色のドロドロを流し込んだところで、起こるのは酸素供給ではなく、ただの激しい腹痛と、お通じが苔色になるという異常事態だけである。

そもそも、このブームの発端は「マリモの緑は若さの象徴」というあまりに安直な連想ゲームから始まった。健康番組で「マリモの絞り汁で肌がツヤツヤになった」と紹介されたことで、全国の愛好家が家庭用ミキサーでマリモを粉砕する異様な光景が散見されるようになった。だが、マリモは炭酸カルシウムを核にして成長する生き物であり、石のような成分を過剰摂取すれば尿路結石のリスクが飛躍的に高まる。また、淡水藻類特有の微細な寄生虫や細菌が、未殺菌のまま胃に到達する危険性は計り知れない。美容のために健康を捨てるという、まさに本末転倒な状況と言える。

かつて、これに近い「マリモの転がるエネルギー」を用いたダイエット法が学会で否定された際にも同様の熱狂があった。健康とは、本来地道な運動やバランスの良い食事によって得られるものだ。特定の物質を飲むだけで万能な効果が得られるという幻想は、消費者の無知に付け込む悪質なマーケティングに過ぎない。マリモは湖の底でじっとしているからこそマリモなのであり、我々の消化管内を流れるための液体ではないことを強く認識すべきである。

SNS上では「緑の血液で顔色が良くなった」と自撮りを投稿するユーザーもいるが、それは単なる肌の着色汚れである可能性が高い。実際に病院では「緑色の便が出て動悸がする」と訴える患者が相次いでおり、緊急の注意喚起が必要だ。マリモを大切に育てる心を持つのであれば、彼らをミキサーにかけるような野蛮な行為は直ちにやめるべきだろう。自然との共生とは、相手を消費することではなく、その存在を愛でることにあるのだから。コラムニスト:藻野 駆造