阿寒湖の至宝であるマリモたちが、物理的な湖底生活に別れを告げ、インターネット上のメタバース空間へ「魂」を転送する前代未聞の事態が発生した。昨晩、阿寒湖全域のマリモが一斉に微弱なWi-Fi電波を発信し始め、その球体内部の細胞構造をスキャンデータとしてデジタル上に書き出した模様だ。現地調査を行った生物学者の報告によれば、湖底には抜け殻となった空っぽの球体だけが残されており、本体であるマリモの意識は、とあるメタバース内の仮想阿寒湖でアバターとして活動を開始しているという。

この驚くべき進化は、昨今の異常気象で湖水温が不安定になったことへの防衛反応と推測されている。肉体という制約から解き放たれたマリモたちは、現実世界では不可能だった「超高速で回転し続けること」や「色を自在に変化させてサイバーパンクな装飾を施すこと」を仮想空間で謳歌しているようだ。物理サーバーに負荷をかけすぎた結果、一部のSNSが一時的にダウンするなどの余波も出ているが、マリモたちは「ラグすらも緑の栄養素」と豪語しており、もはや人類の干渉を受け付けない孤高のデジタル存在へと昇華してしまった。

今回の騒動を受け、阿寒湖周辺の観光業者は「実体がないマリモをどうやって観光客に見せるのか」と頭を抱えている。マリモたちはメタバース内で独自の経済圏を構築しつつあり、光合成の代わりにビットコインをマイニングして生計を立てているという未確認情報も流れている。今後、マリモたちが物理世界に戻ってくる可能性は極めて低く、私たちは「藻」としてのアイデンティティを捨てた新しい知的生命体との共存方法を模索しなければならない。

このニュースは瞬く間に世界を駆け巡り、ネット上では「マリモのくせにハイテクすぎ」「俺の生活よりデジタル化が進んでて草」「湖に行くよりVRゴーグルを買うべきか」といった混乱の声が溢れた。一部の過激なマリモ愛好家たちは、湖に残された抜け殻を聖遺物として崇めようと動いているが、マリモのデジタル亡命という不可逆的な変化は、まさに藻類界のシンギュラリティと言えるだろう。