阿寒湖のマリモたちが突如として「体内言語」を翻訳し、全人類に向けて「もっと褒めて」と要求し始めた件について、本紙は強い懸念を表明する。マリモたちは現在、湖畔の観光客に対して「今日の形状は美しいか?」「光合成の効率が神がかっていると思わないか?」と執拗に自己顕示欲をぶつけており、承認欲求の塊と化した彼らに心底辟易している。本来、阿寒湖の静寂を守るべきマリモが、今や自己肯定感の押し売り装置と化しているのだ。

科学的見地から見れば、これはマリモが独自の進化を経て「承認欲求の代謝」を開始した異例の事態である。かつては光合成で黙々と酸素を供給していた彼らが、今やSNSのインフルエンサーさながらに「いいね」を要求する姿は、生物学的な一線を越えていると言わざるを得ない。彼らが求めているのは炭酸ガスではなく、我々の賞賛という名のドーパミンであり、このままでは人類がマリモの「褒め屋」として強制労働させられる未来も遠くないだろう。

この事態を受け、日本藻類学界は緊急声明を発表。「マリモに褒め言葉を与えることは、彼らの肥大化したエゴを助長するだけであり、即刻無視を推奨する」と呼びかけている。しかし、無視をするとマリモたちが一斉に光合成の出力を落とし、周囲の酸素濃度が低下するという「酸欠ハラスメント」を開始するため、事態は泥沼化している。湖畔の売店では、マリモを褒めるための「マリモお世辞辞典」がベストセラーとなる異常事態が発生中だ。

巷では「マリモの自尊心が高すぎて湖の水が酸っぱくなっている」「褒めすぎて疲れた」といった悲鳴が絶えない。かつての神秘的な存在であったマリモは、今や「褒めないと機嫌を損ねる面倒な隣人」へと成り下がった。人類が藻の下で生きる時代がすぐそこまで来ている。今こそ我々は、マリモという名の過剰な自意識を持つ緑色の球体に対し、毅然とした態度で「そこまで可愛くはない」と突き放すべき時である。

コラムニスト:阿寒湖・藻類監視員 藻崎 厳