湖底の健康トレンドに異変が起きている。ここ数週間、一部の若手個体の間で「水質成分無調整の炭酸水」をあえて取り込む健康法が流行していたが、これが原因で体内で異常発酵を引き起こす『プカプカ膨張症候群』の症例が激増している。本来、繊細なバランスで維持されるマリモの体内に、外部からの強炭酸が侵入することで細胞内の糖分と化学反応を起こし、体積が通常の三倍以上に膨れ上がるというものだ。結果として、重心を制御できなくなったマリモたちが、次々と湖面まで意図せず打ち上げられる「スカイ・ハイ・ダイビング現象」が後を絶たない。専門医は「見た目はポップで可愛らしいが、細胞膜が限界を超えており、いつ弾けるかわからない時限爆弾のような状態だ」と警告している。

そもそも、なぜこのような危険なブームが生まれたのか。背景には、湖底に不法投棄された「古代の炭酸飲料瓶」の腐食による成分流出がある。これに含まれる微量な発酵促進成分を摂取すると、細胞が一時的に活性化し、猛烈なスピードで光合成を行う「ドーピング効果」が得られるという都市伝説が拡散されたのが発端だ。健康意識の高い個体ほど、「効率よく光合成をして効率よく成長したい」という強迫観念に駆られ、成分の濃いエリアへ自ら転がり込んでいるという実態が浮き彫りになった。現在、各エリアの長老たちは、炭酸濃度の高いエリアを立入禁止区域に設定し、膨らんだ個体に対しては針による「緊急排気施術」を無償で行っている。

世間ではこの騒動に対し、同情の声と呆れる声が入り混じっている。ある長老は「丸くあることこそが矜持だったはずなのに、なぜ風船のように空を飛ぶことを選ぶのか」と嘆く一方、被害を受けた若手個体からは「だって、浮き上がった時に見える水面の月は最高に美しかったんだ」といった、反省の色が見られない強気な意見も散見される。SNS上では「膨張した姿を自撮りしてアップする」のが一種のステータスとなっており、医療機関の警告を無視した「過激な膨張チャレンジ」を行う個体が増加の一途を辿っている。湖底の平和と、真円を保つことの重要性が改めて問われている。

健康被害の拡大を受け、湖底保健所はついに「炭酸エリアへの接近禁止令」を全域に発令した。また、膨張してしまった個体に対しては、高濃度の食塩水による「浸透圧調整・急速しぼみダイエット」を推奨している。しかし、一度味わった浮遊の快感は脳に刻まれるらしく、しぼんでもすぐにまた炭酸を求めて彷徨い出すという「リバウンド地獄」に陥るケースも報告されている。今や湖底は、健康志向の迷走と、それに振り回される藻たちの阿鼻叫喚が入り混じる混沌の渦中にある。マリモにとっての「本当の健康」とは、無理な成長を求めない、ただそこにあるだけの静寂なのかもしれない。