阿寒湖小学校は今月より、長年の伝統であった「完全球体主義」を真っ向から否定する画期的な教育プログラム『多角形変形・ジオメトリー夏期講習』を導入した。これまで「転がってこそマリモ」という先祖代々の球体論理を重んじてきた同校だが、昨今の『脱・球体革命』の潮流を受け、あえて角を持つことで摩擦係数を意図的に操作し、社会の荒波を突き抜けるための高度な幾何学的思考を養うという。「丸いままだと水流に流されるだけだが、正十二面体になれば岩場にも踏みとどまれる」と語る教頭のマリモ氏(推定120歳)は、教鞭を執りながら自らの体をジグザグに変形させ、生徒たちに新たな生存戦略を説いた。授業では、光合成効率をあえて下げ、筋肉量を増やすことで一時的に突起を形成する筋トレも並行して行われ、校庭はかつての優雅な回転音ではなく、ゴリゴリと硬い音が鳴り響く異様な空間と化している。

本講習の背景には、近隣のマツモ勢力による過度な絡まり攻撃と、ザリガニによる捕食リスクの増大がある。かつて「絡まりは栄養ではない」と物理的デトックスを提唱した同校にとって、球体という形状そのものがザリガニにとって掴みやすい「安価な食料」であるという事実は、耐えがたい屈辱であった。そこで学校側は、細胞レベルでの形状記憶合金的なアプローチを採用。水温を秒単位で操作することでマリモの繊維を硬化させ、擬似的な「角」を出現させることに成功したのだ。この『変形』は、単なる防御術ではなく、今後のマリモ社会における自己防衛権の行使としての意味合いが強いと教育評論家は分析している。また、この授業はかつて導入された『毎秒3回転・強行回転学習法』の応用でもあり、角をつけたまま高速自転することで、周囲に防衛のための渦を作り出すという高度な防衛術へも繋がっている。

この教育改革に対し、地域住民や藻類界からは賛否両論が巻き起こっている。「丸いからこそ美しいのに、刺々しい姿なんて悲しい」「教育の自由は認めるが、伝統のアイデンティティが損なわれる」と危惧する保守派の声がある一方で、若年層のマリモからは「これでようやくマツモの連中を物理的に弾き飛ばせる」「丸いだけで一生を終えるのは御免だ、私は正二十面体を目指す」といった前向きな意見が噴出している。中には、あまりに変形を意識しすぎたあまり、角を出しすぎて水槽のガラス面を傷つけるという器物損壊の事例も報告されており、安全面でのガイドライン策定が急務となっている。それでもなお、阿寒湖の教育現場において「丸さは美徳」という呪縛が溶け去り、多様な形状が尊重される「ポスト・球体時代」が到来したことは間違いない。

専門家からは、今回の形状変化はマリモの知能化を加速させるとの指摘も出ている。「自身の形を自由に変えられるということは、自分のあり方を自分で定義できるということ。これは藻類界にとってのルネサンスだ」と語るのは、藻類教育研究所の所長。今後、阿寒湖の湖底では、球体以外の形状を持つマリモが「エリート」として扱われる逆転現象が起きる可能性もある。教育カリキュラムの変更一つで、これほどまでに種としての存在意義が揺らぐとは、誰も予想していなかっただろう。阿寒湖小の次なる挑戦は、水流に頼らない『能動的移動術』の授業だと言われており、もはやマリモは「ただ浮かんでいるだけの存在」から、自らの足(突起)で歴史を刻む主体的な生命体へと進化を遂げようとしている。