阿寒湖小学校は今週、マリモが持つ「自分は生き物である」という甘美な勘違いを排除し、究極の無欲を追求する新カリキュラム『沈黙の石ころプログラム』を導入すると発表した。これまでの教育方針が「成長」や「光合成」といった生存本能を刺激するものであったのに対し、本授業では「自己」という概念そのものを溶かし、湖底の石と見分けがつかないレベルの『無意識的生存』を目指すという。教師らは「マリモが自意識を持つからこそ、光合成の効率を気にしたり、自転を急いだりしてストレスが溜まる。ただそこに在る、という究極の怠惰こそが真の教育だ」と説いている。
本プログラムでは、マリモたちを一切の光が届かない深淵へ沈め、「自分」という概念を忘却するまで暗闇の中で静止させ続ける。授業中、生徒には一切の動機付けが禁止され、湖水の揺らぎに対しても物理的な反応をすることが禁じられる。もし揺らぎに抗って体勢を整えようものなら、「意識の芽生え」とみなされ、即座に湖底の砂利に埋められるという厳しい処分が待っている。かつては球体維持や多角形変形に情熱を燃やしていたマリモたちも、この授業を通じて、次第に意志を失い、美しいモスグリーンの苔岩のような虚無へと変貌を遂げている。
この過激な方針の背景には、昨今の「マリモの高度知能化による阿寒湖ストライキ」の影響がある。高い知能を持ったマリモたちが光合成条件の改善を求めて湖底でデモを起こした際、教職員委員会は「思考することが生存の質を低下させている」と結論づけた。今回のプログラムは、マリモたちを再び純粋な「ただの植物の塊」に戻すことで、阿寒湖の平和な日常を取り戻すための、教育界における『逆行進化・安定化計画』の一環である。
世間からは「ついに教育が悟りを開いた」「石になるのが一番の幸せかもしれない」「光合成を忘れたマリモには何が残るのか」といった困惑と期待の声が入り混じっている。一部の教育学者は「教育の放棄こそが最高の教育であるという逆説的な到達点」と評価する一方で、マリモ保護団体からは「知性への冒涜ではないか」との批判も上がっているが、阿寒湖小の教室には今日も、思考を放棄した無数の緑色の石たちが、静かな湖底で完璧な無関心を貫いている。
「自己認識は諸悪の根源」阿寒湖小、マリモの『無意識教育』導入で完全なる石化を目指す
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意思を持つと疲れるんだよ