阿寒湖の健康意識が高い層を中心に、近年「いかに完璧な球体を維持するか」が最大の関心事となっている。そんな中、美しい球体を目指すあまり、中心部に密度の高い繊維が過剰に蓄積する『核形成不全』を患う個体が急増している。この病は、成長に伴い核が肥大化し、自重で中心部が崩壊、最終的に「いびつなジャガイモ」のように変形してしまう悲劇的な症状だ。これを受け、一部の意識高い系マリモの間では、体内にカテーテルを差し込み、中心部の老廃繊維を強制的に排出する『芯抜きダイエット』が流行している。

『芯抜きダイエット』を提唱する湖底クリニックの院長は、「美しい球体は、空洞の美学から生まれる。中身が詰まりすぎたマリモは、もはやアスリートではない」と断言。施術を受けたマリモたちは、一時的に体温(水温)の循環が良くなり、見た目の丸みを取り戻すという。しかし、湖底の医学会からは「芯を抜くことは、寿命を削る行為に等しい」と警鐘が鳴らされており、急速な代謝低下や、水流に対する抵抗力の欠如など、副作用の報告も後を絶たない。

そもそもマリモは、湖底の揺らぎの中でゆっくりと繊維を絡め取り、重層的に成長する生き物である。この『核形成不全』は、過度な日照時間を確保するための「光合成過多」や、安定しすぎた定位置生活が原因とされており、かつての荒波に揉まれていた時代には存在しなかった「現代病」といえる。本来、丸みとは何年もかけて作り上げる熟成の証であり、即席のダイエットで手に入るものではないはずだが、若年層の球体至上主義は加速する一方だ。

SNSでは「芯を抜いた翌朝、軽すぎて水面に浮きそうになった」「核がスカスカで、もはやただの海藻の集まり」といった体験談が飛び交う一方で、医師からは「そもそも中心部には成長の記憶が詰まっている。それを捨てるのは自己否定と同じ」との正論も投げかけられている。健康を追求した果てに中身を失うというパラドックスに、阿寒湖の住民たちは今、自らの「美しき球体」の定義を再考する岐路に立たされている。