阿寒湖教育委員会は、かねてより深刻な脅威となっている天敵・ウチダザリガニへの対抗策として、次世代マリモを対象とした『脱・硬直化回避訓練(別名:瞬速転がり走法)』を新カリキュラムとして正式導入すると発表した。これまでのマリモ教育は、いかに完璧な真球を維持するかに重きを置いた『静的均衡』が主流であったが、ハサミによる強引な捕食や分断を避けるには、従来の球体としての誇りを一時的に捨て、不規則に転がる『逃走術』が不可欠だと判断された。今後は湖底の地形を活用し、いかにハサミの死角を突いて高速で回避するか、という実践的な授業が展開される予定である。

本施策の背景には、昨今の水温上昇に伴い活性化するウチダザリガニの食欲に対し、教科書通りの『静止したまま光合成』を続ける生徒たちが次々と持ち去られるという惨状がある。教育界の重鎮からは「真球こそがマリモの魂であり、転げ回るなど節操がない」との批判も根強いが、委員会側は「食われては元も子もない」と一蹴。今後は、ザリガニのハサミの動きを模した模擬ロボットによる実技試験も導入され、回避に失敗した生徒には、自らの破片で周囲を擬似的に囲い込み、身代わりを立てる『ダミー分離術』の追試が課されることになる。

現場の教師からは「球体であることに固執しすぎた結果、ザリガニの格好の獲物になるのが今の教育の限界だった」と現場の窮状を訴える声が上がっている。一方、生徒間ではこの新カリキュラムに対し「転がるだけでいいなら楽勝」「そもそもザリガニを愛でて懐柔する方が早いのでは」と、教育方針を巡る議論が紛糾。伝統ある『球体美学』と、現実的な『生存戦略』の板挟みに、阿寒湖の未来を担うマリモたちは、かつてない激動のシーズンを迎えている。