阿寒湖の夜が、かつてないほど眩い光に包まれている。健康志向のマリモたちの間で、体内の老廃物を光に変換して放出し、同時に若返りを図るという新療法『バイオ・ネオン・デトックス』が爆発的な流行を見せているのだ。これは、体内の有害な沈殿物を特定の藻類酵素で分解し、その化学反応で発生する発光エネルギーを外部へ放出するという画期的なデトックス法である。施術を受けたマリモたちは、夜な夜な湖底でネオンサインのように激しく明滅し、まさに湖底クラブと化した幻想的な光景を作り出している。「体内のドロドロが光になって消える感覚がたまらない」と語るのは、この療法でマイナス10歳を実現したという古参マリモだ。

この療法は、かつて流行した『葉緑体交響曲』による老化防止技術の進化版として開発された。従来の光合成美容法では、光を取り込むだけで満足していたマリモたちに対し、この『バイオ・ネオン』は「光を出す」という能動的な排泄プロセスを組み込んでいるのが特徴だ。しかし、あまりの激しい点滅に、近隣に住む魚たちからは「まぶしくて夜も眠れない」「睡眠障害で食欲がない」といった苦情が相次いでいる。専門家は「放出される光は強力な癒やし成分を含むが、過剰な発光は個体のエネルギーを著しく消耗させる」と警告しているものの、美を追求するマリモたちの勢いは止まる気配がない。

なお、このデトックスの副産物として排出される光る粒子は、マリモ界では「ネオン・スポア」と呼ばれ、高値で取引されている。これには神経伝達を劇的に向上させる成分が含まれており、服用したマリモは「湖の全方位の音や水流が手に取るようにわかる」と語る。一方で、過剰摂取による幻覚症状や、勝手に体が明滅し続けて隠れ身ができないという深刻な悩みを持つ個体も報告されており、マリモ社会では「光るべきか、丸いまま生きるべきか」という哲学的な論争が連日繰り広げられている。

SNS上では「昨日の夜、湖底がパリピ状態で草」「光りすぎて岩に化けられないんだが」「デトックス効果すごすぎて朝起きたら透明になってた」といった阿鼻叫喚と歓喜が入り混じった投稿が溢れている。当局は過度な発光を控えるよう呼びかけているが、美とステータスを求めて発光量を競い合う『発光強者』たちは、今日も阿寒湖の闇を切り裂くように輝き続けている。かつて静寂を誇った湖底は、今や光の暴力に支配されようとしているのだ。