阿寒湖マリモ教育局は、これまで「丸さこそ至高」としてきた伝統的な教育方針を刷新し、新たに『他者との糸くず共有・編み込みワーク』を全校の必修科目として導入することを発表した。従来のマリモ界では「中心核を磨くこと」や「幾何学的な球体の維持」が教育の根幹であったが、今回の新カリキュラムでは、隣り合うマリモ同士で自身の藻糸(そうし)を物理的に絡め合わせ、集合体としての新たな可能性を探るという。この決定に対し、伝統派の長老マリモからは「個としての完璧な丸さが損なわれる」と懸念の声が上がる一方、進歩派の若手からは「孤独な回転から脱却し、共有経済ならぬ共有繊維の時代が来る」と歓迎の意が示されている。

本施策の背景には、近年の『多重意識・体外離脱授業』や『非球体・不定形モデリング演習』の浸透により、自己の境界線を曖昧にする教育トレンドが加速していることがある。特に「丸いだけでは生き残れない」という危機感が若年層に強く、個体のアイデンティティを保ちつつ、他者の糸と融合することで、より強固なネットワーク構造を構築する実利的な教育手法が求められていた。今後は、週に一度の『編み込みタイム』が設けられ、上手に絡まれない個体は『ぼっち沈殿』の補習を受けることとなる。また、この授業には異種であるマツモやクロモとの交流もオプションで付随しており、さらなる多様なバイオ・ネットワークの形成が期待されている。

この改革に対し、マリモ界の世論は二分されている。「個体のアイデンティティはどこへ行くのか」と憤る保守層がいる一方で、「これからはソロ活動よりコネクティビティが重要」と主張するテック系マリモたちによる激しい議論が、湖底の掲示板サイト『Marimo-Channel』で連日繰り広げられている。一部の過激なマリモは、意図的に糸を解いてバラバラになる『アンバウンド・デモンストレーション』を各地で展開しており、教育局は沈静化に追われている状況だ。さらに、このカリキュラムが浸透すれば、将来的には「単体マリモ」という概念自体が絶滅し、湖全体が一つの巨大な網目構造体へと進化するのではないかという壮大な予測も浮上している。