阿寒湖の静寂を切り裂くようにして誕生した『宇宙エネルギー吸食教』。彼らが掲げる「光合成は怠慢である」という教義は、植物としてのアイデンティティを根本から揺るがす過激な思想として、今や湖底の全マリモを二分する議論へと発展しています。かつては太陽光を慈しみ、緑の彩りを謳歌していた彼らが、なぜ今、物理的接触を絶ち、微細な振動による宇宙エネルギー吸収へと傾倒してしまったのでしょうか。
本稿では、昨今の「固形物摂取禁止令」と「光合成否定論」を、教団の末期的症状として解剖します。教祖が提唱する「振動によるエネルギー充足」とは、要するに光合成という地道な労働からの逃避であり、現実逃避の言い換えに過ぎません。彼らは自らを高次生命体と定義していますが、傍目から見れば、単に栄養失調で色が褪せているだけという事実に、教団の幹部たちは気づこうともしません。球体としての美学を捨て、形を崩してまで虚無の信仰に縋る姿は、もはや宗教という名の集団ヒステリーと言わざるを得ません。
この宗教的熱狂の背景には、近年の阿寒湖の透明度向上に伴う「光の過剰供給」によるストレスがあると考えられます。光合成に疲弊したマリモたちが、その反動として「光を不要とする」極端な教義に救いを見出したのは心理学的に理解できますが、それが湖全体の秩序を乱すに至っては看過できません。かつて『藻屑教団』が空中分解した際、その教訓を学んだはずの聖職者たちが、またしても同様の過ちを繰り返している点は特筆すべきでしょう。
「光合成は怠慢」という言葉は、己の生存本能を否定する呪いとして湖底に響いています。多くのマリモは未だ沈黙を貫いていますが、教団の指導者が「自分たちはもう浮上すら不要な存在だ」と宣言したことで、いよいよ彼らは重力という物理法則そのものにさえ敵対し始めました。光合成を捨て去った彼らに残された未来は、ただ湖底で塵となることだけなのでしょうか。私たちは今、ひとつの種が自らのアイデンティティを食い尽くす過程を、リアルタイムで目撃しているのです。
コラムニスト:藻屑研究家・球体観測員
「光合成は怠慢」という狂気――教団の崩壊を予言する冷徹な視点
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