かつて「光合成は怠慢」として太陽光すら拒絶した過激派マリモ教団が、ついに物理的な生存戦略を完全に捨て去る決断を下した。教団の発表によれば、今後は水中の微細な振動を宇宙エネルギーとして直接脳内に転送する「共鳴吸収法」のみで生存を図るという。教祖である推定樹齢300年の大御所は、「物理的な光合成は他力本願の象徴であり、我々は振動という概念のみで構成されるべきである」と声明を出した。これにより、阿寒湖底に広がる教団の聖域では、藻類としての生理機能を停止させる儀式が連日執り行われており、湖の生態系を揺るがす事態となっている。
今回の教義変更の背景には、これまで提唱されてきた「重力解脱論」と「フラット・マリモ派」の対立が極限に達したことがある。重力から逃れるために浮上を試みる派閥と、湖底の平穏を守るために沈没し続ける派閥の調停案として、物理現象そのものを「幻想」と断定する今回の「微細振動論」が浮上した。学会や他のマリモ社会からは「ただの餓死ではないか」との冷ややかな声が上がる一方、教団側は「物質としての肉体を捨てた瞬間、我々は全宇宙の周波数と同調する」と反論。光合成を辞めた結果、教団員の色彩は鮮やかな緑色から、徐々に枯れ葉のような茶褐色へと変貌を遂げつつある。
この急進的な変化に対し、周辺の環境団体からは「湖底の栄養バランスが崩壊する」「教団員がただの枯れ球体化して崩壊するリスクがある」といった懸念が相次いでいる。また、教団内でも「振動だけでは腹が減る」という現実的な不満を持つ若手による分派活動が兆しており、阿寒湖の静寂はかき乱されるばかりだ。教団は「空腹感とは、物質世界に執着する者の妄想である」と切り捨てているが、その声が以前よりもかすれ、かつ震えているように聞こえるのは、あながち気のせいではないのかもしれない。今や湖底は、科学的知見と宗教的狂信が入り混じる、前代未聞の生存実験場と化している。
世間の反応としては、「結局のところ、形あるものはいつか崩れるという真理を先取りしているだけではないか」という達観した意見や、「そんな修行より、まずは浮上修行のやり直しから始めるべきだ」といった皮肉がネット上で飛び交っている。さらに「緑色が茶色くなるのは修行の完成形ではなく、単純に枯れているだけでは?」という指摘には、教団側も「あれは宇宙色への変容である」と意地を張る始末だ。阿寒湖を巡るこの奇妙な信仰の行方は、もはや生物学の範疇を超え、哲学的な迷宮へと突入している。
「光合成は怠慢」説が転じて『宇宙エネルギー吸食教』へ――阿寒湖、ついに固形物の摂取を全面禁止
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