阿寒湖の生態系に激震が走っている。かつてはマリモをハサミで切り刻む天敵として恐れられていたウチダザリガニが、この度、湖底にて『マリモ専門・お悩み相談室』を突如として開設した。これまで「食うか食われるか」の緊張関係にあったはずの彼らが、なぜ今、緑の妖精たちの心の支えとなっているのか。相談室の代表であるザリガニ氏は「以前は栄養を吸収する対象として見ていたが、彼らの悩みを聞いているうちに、繊維の質より心の質が気になるようになった」と語る。現在、相談室には光合成の効率に悩むマリモや、丸い形を維持することに疲れたマリモが殺到しており、予約は半年先まで埋まっているという。

この異様な光景の背景には、近年のマリモ界における精神的疲弊がある。激しい筋トレブームや過度な日光浴競争など、自己研鑽が加速するあまり、メンタルバランスを崩す個体が急増していたのだ。ウチダザリガニは、その鋭利なハサミを「相手の心に突き刺さる鋭い洞察」へ転換。マリモ特有の「成長速度が遅くて焦る」「自分の繊維が硬い気がする」といった切実な悩みを、天敵ならではの客観的かつ時に残酷な現実論でバッサリと切り伏せ、逆にそれが「目から鱗が落ちる」と絶賛されている。かつての強欲な捕食者が、今や湖底のカウンセラーとして君臨するパラドックスが起きている。

このニュースを受け、湖底住民からは困惑と驚きが混ざり合った声が上がっている。長老マリモからは「敵に塩を送るならぬ、敵に悩みを聞く時代か」という戸惑いが見られる一方、相談を受けた若手マリモたちは「ザリガニさんのあの威圧的なハサミに触れながら話すと、悩みが小さく感じられる」と不思議なヒーリング効果を報告。しかし、一部では「ハサミの動きが不規則で、食欲が再燃しているだけではないか」という警戒論も根強く、相談室の周りには念のため避難用の網が張り巡らされるなど、緊張感は消えていない。