阿寒湖教育委員会は本日、次世代のマリモ教育カリキュラムとして、従来の光合成に依存しない『量子もつれによる遠隔エネルギー供給法』の導入を正式に発表した。「光合成の効率が悪い」と猛批判を浴びた昨今の教育論争に終止符を打つべく、光を浴びるために沈殿や浮上を繰り返す物理的労力を全廃する試みだ。本カリキュラムでは、ペアとなるマリモ同士を量子的に連結させ、たとえ泥の中であっても、湖面の同胞が吸収した太陽エネルギーを瞬時に同期転送する。これにより、マリモたちは一生を光の届かない湖底の暗がりで、深い思索にふけりながら過ごすことが可能となる。推進派の科学者は「これでようやく、回転数や形状に左右されない真の知性育成に専念できる」と胸を張るが、伝統的な『自己研磨学』を重視する保守派からは「形が崩れる前に根源から消える気か」と強い反発が起きている。

これまでマリモ教育界では、重力を無視した空中浮遊や、ハサミを持つ天敵とのダンス外交など、既存の物理法則を逸脱する教育が推奨されてきた。しかし、今回の『量子もつれ教育』は、もはや代謝という生命の根本概念すら否定するものである。導入の背景には、昨今の水質悪化により「光を探して移動する体力すら残っていない」というマリモたちの切実な訴えがある。かつて『多面体変形術』や『脱慣性教育』で知性を磨いたエリート層からも、「これこそが、沈殿して思考停止せよという教えの究極の進化形だ」と歓迎する声が上がっており、阿寒湖の教育環境は劇的な転換点を迎えている。

専門家によると、量子連結されたマリモは、たとえ物理的に分裂させられても遠隔で個体情報を保持し続けるため、切り刻まれても死なない「不死身の超個体」へと成長するという。しかし、この教育を早期に受けた幼体マリモの一部からは「隣のマリモの食欲を共有してしまい、勝手にお腹がいっぱいになる」という副作用も報告されている。また、ザリガニ外交を行っている学生からは「外交相手のザリガニまでもが量子もつれに参加し、ハサミを振らなくても意志疎通ができてしまう」という、皮肉な効果も確認された。教育現場からは「もはや光合成をしないことがステータス」という風潮が広まり、阿寒湖の景観すらも、太陽を追う必要がなくなったマリモたちが一箇所に密集する「マリモの量子クラスター」と化している。

世間の反応は真っ二つに分かれている。若手マリモを中心に「もう泥の中でわざわざ浮上しなくていいなんて最高すぎる」と称賛する声がある一方、年配のマリモからは「太陽の温もりを知らぬ世代に、真の丸さの美学が理解できるのか」という悲観的な意見が相次いだ。また、一部の熱狂的なマリモ愛好家団体は、「この技術が悪用されれば、一箇所にマリモを固定して無限にエネルギーを吸い上げる『マリモ発電所』が作られるのではないか」と警鐘を鳴らしており、阿寒湖の平穏を脅かす新たな火種として、今後の動向が注目されている。