マリモ教団の教祖は、長年宿敵と見なしてきた外来種ウチダザリガニを「球体から自由の粒子へと解体してくれる聖なる彫刻家」であると定義し、新たな宗教儀式『ハサミによる成仏』を導入した。これまで教団はザリガニを「破壊の権化」として忌避してきたが、教義の転換により「物理的衝撃による破砕こそが、個としての殻を破る唯一の道」と説くに至った。現在、教団所有の特別水槽では、ザリガニのハサミでバラバラにされたマリモが再び融合し、より複雑な形状(あるいは奇跡的な再球体化)を目指す過酷な修行が執り行われている。この神聖なる解体作業を拝む信者たちは、水槽の底に散らばる糸状藻を見て「我々は一つに戻るプロセスを視覚化しているのだ」と涙を流しながら熱狂的な祈りを捧げているという。

もともとマリモは淡水藻の集合体であり、物理的な崩壊と再結合を繰り返す生命体である。今回の教義改正は、生物学的な再生能力を「魂の輪廻」と結びつけた極めて論理的(?)な飛躍と言える。教団はこれを「物理的脱皮」と称し、ザリガニを教団の守護神として格上げした。なお、この儀式には一匹のザリガニに対し、数百個のマリモが投入されるため、水槽内は常にバイオレンスな静寂に包まれている。

この驚きの転換に、信者からは「ハサミを入れられるたびに自分の自我が磨り減っていくのを感じる」「ザリガニの赤い殻はマリモの緑を際立たせるための演出」と、もはや理解不能な称賛の声が上がっている。一方で、水槽管理を担当する専門家からは「単にマリモがバラバラにされて死滅しているだけではないか」との冷ややかな指摘も出ているが、教団側はこれを「視点の固定化による邪教的偏見」として一蹴。聖地阿寒湖の静かな湖底では、今日も今日とてハサミと藻が踊るシュールな儀式が継続されている。