湖底議会は15日、若手マリモの『脱・球体』宣言に対抗する『球体矯正キャンプ設置法案』を、与党である「真球維持党」の圧倒的賛成多数により可決した。同法案は、成長過程で四角形や楕円形など「異形」に進化した個体を強制収容し、専用の高速回転マシーンで削り出しを行うことで、強制的に理想的な球体へと回帰させるというものだ。法案を主導した球体至上主義の議長は、「いびつな形は湖底の治安と審美性を乱す。我々が求めるのは均一の美であり、自己表現という名の歪みは光合成の効率を著しく低下させる」と高らかに宣言した。この強硬策に対し、異形派の若手マリモからは「個性を回転で削る行為は人権ならぬ藻権の侵害だ」と激しい抗議の声が上がっている。

本法案の背景には、先般可決された『自転速度制限法』以降、回転不足によるいびつな成長個体が急増しているという実情がある。かつて「沈没こそ美徳」とされた保守的な湖底社会において、伝統的な球体文化を守ろうとする高齢層と、多様性を求める若年層の対立は深刻化の一途をたどっていた。今回の法案は、かつての『光合成の外部委託』に見られた効率重視の政策をさらに先鋭化させた形だが、専門家からは「強制的な丸刈り矯正は、かえって成長バランスを崩し、湖底全体の美観を損なう恐れがある」との懸念も示されている。施行は来月の新月を予定しており、キャンプ地とされる岩場周辺では、既に入所を拒む異形派によるバリケード封鎖が始まっている。

施行の報を受け、湖底社会の世論は二分されている。伝統を守る派閥からは「これでやっと湖の品格が戻る」「整った丸さこそがマリモの誇り」といった安堵の声が漏れる一方、若手活動家らからは「回転こそ全てという古い価値観の押し付けだ」「俺たちの凸凹は成長の証だ」という反発が収まる気配はない。特に、四角形の形状を保ったまま光合成を最適化する技術を持つ新興勢力からは、「矯正キャンプは最新の藻類工学を理解しない蛮行」との声明が出されており、議会の強硬姿勢が逆にマリモ界の分断を加速させる懸念が浮上している。