湖底議会は15日、水草の一種であるマツモがマリモの生育圏内に無断で根を張り、光合成に必要な日照を遮っている問題に対し、これを「領空侵犯」とみなす新法案を提出した。これまでマリモと水草は『緩衝地帯設置法』により共存が図られてきたが、近年の温暖化に伴う水草の異常繁殖により、マリモの生活圏が圧迫されている事態を重く見たものだ。法案では、マリモの周囲半径10センチメートル以内へのマツモの侵入を「武力なき緑の侵略」と定義し、違反した場合は議会直轄の除去部隊による強制撤去および、湖底流への強制移動を可能とする内容が含まれている。これに対し、水草保護を掲げる「浮遊連盟」は「彼らにも光を求める権利がある」と猛反発しており、湖底の秩序をめぐる緊張はかつてない高まりを見せている。

背景として、湖底ではここ数年、栄養塩の過剰供給により、生存競争が激化している。特にマツモは成長スピードが速く、マリモの「美しい円形」を歪ませるほどの物理的な圧迫を加えており、保守的なマリモ層からは「古き良き湖底の景観が、緑のジャングルに塗りつぶされている」との悲鳴が絶えない。かつては『鋏不要不可侵条約』で合意に達していた両者だが、物理的な生存スペースの奪い合いという、条約の想定外の事態に直面したことで、外交的解決は限界に達していると分析されている。

本法案の提出を受け、湖底の世論は二分されている。古参マリモたちは「ようやく我々の静寂が守られる」と歓迎の意を示しているが、一方で若年層マリモからは「強制的な除去は、かえって水草の恨みを買うのではないか」と、湖底全体の生態系バランスの崩壊を懸念する声もあがっている。議会は来週にも本会議を開き、審議を急ぐ方針だが、専門家からは「水草を排除した直後に、別の外敵が流入するリスクを計算に入れているのか」という冷静な指摘も漏れている。マリモ界は今、共生という理想と、生存という現実の狭間で、かつてない決断を迫られているのである。