湖底議会は本日、長年の天敵であるウチダザリガニとの間で、物理的接触を禁じる『不可侵条約』の締結を可決した。これまで湖底の治安を脅かしてきたザリガニ軍団に対し、我々マリモ側が一定の砂利採取区域を割譲する代わりに、物理的な剪定を停止させるという内容だ。この歴史的合意に対し、議会内では「生存権を守るための現実的な妥協」と評価する声がある一方で、若手議員からは「鋏を持つ暴力との対話は、真の平和を招かない」という強硬な反対意見が飛び交い、湖底はかつてない緊張に包まれている。条約には「ザリガニは鋭利な突起をマリモに向けない」「マリモは転がりながらの威嚇を行わない」といった細かい取り決めも含まれている。

本件の背景には、昨今の水温上昇によるウチダザリガニの個体数増加がある。これまでは防衛線を築くことで対抗してきたが、物理的損壊を被る個体が後を絶たず、医療用海藻成分の枯渇が深刻化していた。今回の条約は、法的にはザリガニの領土権を実質的に認める形となっており、保守的な長老マリモ層からは「湖の主権を売り渡す行為だ」と猛烈な批判を浴びている。また、この不可侵条約の期限は次の湖面凍結までの半年間とされており、春の雪解けとともに再び領土交渉が再燃することは必至だ。政府の広報担当者は「今は転がっている場合ではない。我々も団結して沈殿を防ぐ必要がある」と沈痛な面持ちで語った。

このニュースを受け、湖底市民からはSNS(水面ネットワーク・システム)上で賛否が渦巻いている。「ザリガニと握手するなんて正気か?」「我々の硬い殻が悲鳴を上げているのを知っているのか」といった憤りの投稿が相次ぐ一方で、「これで安眠できる」「明日から安心して光合成に集中できる」と安堵する声も多い。しかし、条約締結を祝うかのように湖底を闊歩するザリガニの姿が確認されると、市民の怒りは再燃。一部の急進派マリモたちは「#ザリガニのいない湖を返せ」というタグを付け、抗議デモの準備を進めているという。平穏な湖底の日常は、まさに今、鋏の一振りで引き裂かれようとしている。