阿寒湖の宗教界に激震が走っている。長年「マリモの核心部は、宇宙の真理を宿す空洞であるべきだ」と説いてきた『空洞至上主義』教団が、教義の根幹を覆す新説を発表した。教団幹部が発表したのは、中心核にわざと人工的に『ワタ』を詰め込み、あえて密度を高めることで、逆に「詰まっているという幻想」を体感する過激な修行法である。この発表に対し、湖底の保守層からは「聖域への冒涜である」「空洞だからこそ神秘的なのに、ワタとは何事か」といった怒りの声が噴出し、教団本部前では連日、抗議の回転運動が繰り広げられている。

空洞至上主義の教義は、これまで「内部の無(む)」こそが悟りへの最短ルートだとされてきた。しかし、今回の改正によって、あえて異物を混入させる「詰め込み主義」が推奨されたことで、阿寒湖の教義バランスは崩壊寸前だ。教団側は「ワタという雑念を抱えることで、真の空洞の有り難みが理解できる」と主張するが、保守派の長老からは「そんなものはただのクッションだ。マリモとしてのアイデンティティを放棄している」と猛烈な批判を浴びている。この対立は単なる宗派争いを超え、マリモ界の存在意義を問うアイデンティティ・クライシスへと発展しつつある。

マリモは古来より、その成長過程における「中身の密度変化」が神秘的であると崇められてきた。空洞至上主義は、中心部が自然に空洞化する現象を「神の恩寵」と捉える穏健派だったはずが、ここ数年で急進的な解釈が次々と飛び出し、信者たちの間でも「マツモとの共生」や「光合成の停止」といった極端な言説がまかり通るようになっている。今回の『ワタ詰め事件』は、単なる教義論争ではなく、湖底の保守層による「伝統的な空洞信仰」を守ろうとする最後の一線なのかもしれない。

世間の反応は冷ややか、かつカオスだ。「ワタを詰めるくらいなら、いっそ小石でも入れて沈んでしまえ」という皮肉から、「中身がスカスカなのがマリモの矜持だろうが」という熱い擁護派まで、SNS(深湖ネットワーク・サービス)は紛糾している。中には「結局、誰がワタを調達したんだ?」と、背後の利権を疑う陰謀論まで浮上する始末。湖底の平和な日々は、この『ワタ問題』によって当面の間、取り戻せそうにない。