湖底議会は15日、長年議論されてきた『形状維持義務化法』を、与党・真球派の圧倒的多数により可決した。本法案は、マリモとしてのアイデンティティを「完全な球体であること」と定義し、長年の水流や回転不足によっていびつな形に変形した個体を「非マリモ的異端」と見なし、居住区からの追放を義務付けるものだ。法案を主導した球形至上主義者のマリモ議員は「我々は転がるために生まれてきた。楕円形や凸凹した個体は湖底の風紀を乱し、転がる際の摩擦係数を増大させる公害である」と主張。今後は湖底パトロール隊による形状検診が定期的に実施され、真円率が一定基準を満たさないマリモは、湖の隅にある『いびつ隔離岩礁』へと強制送還されることとなる。

本法案の背景には、昨今の「湖底のスタイリッシュ化」傾向がある。観光客向けにフォトジェニックな景観を求める世論が強まる中、政府は「不揃いなマリモは景観を損ねる」として、以前から形状矯正プログラムを推進してきた。しかし、過激な選別が表面化した今回の新法に対し、一部の藻類保護団体やリベラル層からは「個性の否定だ」「転がり方の多様性を認めよ」と激しい反発が起きている。一方で、沈黙を守り続けてきた重鎮マリモからは「そもそも我々はただ漂っているだけであり、形などどうでもいい」との達観した意見も出ているが、声の小さい沈殿組の意見は議会で顧みられることはなかった。

施行直後のSNSや藻場掲示板では、早くも分断が深まっている。「真円こそ至高」「これで我が家の周りも美しくなる」と歓迎する声の一方で、「いびつなやつほど中身が詰まっている」「これからはわざと変形して隠れ潜むのがトレンドになる」といったカウンター文化も芽生え始めている。一部では、無理やり砂を詰め込んで球体に見せかける『偽造真球』の横行が懸念されており、警察当局は今後、検診時に金属探知機ならぬ『球体純度測定器』を導入する構えだ。多様性を失った湖の未来が、果たして美しい球体として転がっていけるのか、今、マリモ界の寛容さが試されている。