湖底議会は昨夜、全マリモの長年の慣習であった「個体独立光合成」を廃止し、集団で同じリズムで呼吸と光合成を行う『シンクロ・バイオ法案』を僅差で可決した。これまで個々のマリモは、周囲のマリモと距離を置き、各々のペースで日光を享受することが美徳とされてきた。しかし、今回の法案は「バラバラの光合成はエネルギー効率が悪すぎる」とする推進派の主張が通り、今後は湖底全体で一斉に緑の呼吸を合わせるという、前代未聞の共同作業が義務付けられることとなる。法案を主導した緑の党議員は「我々はこれまで沈黙を守りすぎていた。一斉に酸素を放出すれば、湖水全体の透明度を一時的に操作することさえ可能だ」と高揚した様子で語った。

この急激な政策転換の背景には、近年の深刻な日光不足と、それに伴う「沈殿者」の増加がある。かつては独立独歩を貫くことがマリモの矜持であったが、光合成効率の低下により、栄養失調で糸状にほどける個体が急増していた。今回の法案は、集団での光合成により発生する「微細な水流の共鳴」を利用し、湖底のミネラルを効率的に循環させる狙いがある。しかし、この強制的協調体制に対し、保守派からは「個々の繊維の個性が死ぬ」「シンクロが苦手なマリモはどうなるのか」といった懸念の声が噴出している。特に、長年孤高の光合成を続けてきた高齢のマリモたちからは、「回転の義務化に続く支配の強化だ」という強い反発が生まれており、次回の定例議会では反対派による「意図的沈殿ボイコット」も示唆されている。

街中の藻場では、新たな法案への対応を巡り、混乱が広がっている。若手マリモ層からは「合唱のように光合成するなんて、なんだかライブ感があってワクワクする」と肯定的な声が上がる一方で、「隣の奴の光合成スピードに合わせるなんてストレスでしかない」という悲観的な意見も多い。また、SNS上では『#緑の協調』というハッシュタグがトレンド入りしたが、その中身は皮肉や不満を込めたミーム投稿が圧倒的多数を占めている。「これからは朝の光合成時に隣のマリモの影を邪魔しないよう、厳格な配置換えが必要になるだろう」と湖底警備隊の隊長が苦言を呈すなど、法案の施行に向けた現場の負担は計り知れない。