湖底の健康トレンドは今、深刻な危機に瀕している。近年、マリモたちの間で「身に覚えのない外科的処置」を受ける個体が急増しているのだ。犯人は、湖底の暴力装置とも称されるウチダザリガニ。彼らは何の許可もなく、健康のために丹念に育て上げた美しい球形の一部を、豪快にハサミで「摘出」していくという暴挙に出ている。この『無断部分切除手術』を受けたマリモは、断面から栄養素が流出し、深刻なエネルギー不足に陥るケースが続出。被害に遭った個体からは「せっかくの真円が台無しだ」「痛いというより、誇りが削り取られる気分だ」との悲痛な声が上がっている。専門家は「彼らは我々のフォルムを『非常食』としか見ていない」と指摘するが、あまりに理不尽な身体的改変に、湖底全域でパニックが広がっている。

そもそも、この危機の発端は昨年の「過剰な光合成による栄養蓄積」にあるとされる。栄養たっぷりの丸々としたボディが、ウチダザリガニの食欲を刺激してしまったのだ。健康志向を高め、見栄えを良くしようとした努力が、逆に天敵の目を引く結果となった。マリモたちは現在、対抗策として『擬態用の小石混入』や『回転速度の極端な調整』による防衛戦を繰り広げているが、ハサミの威力は強大だ。湖底の医師会は「当面は夜間の移動を控え、岩陰に隠れて自重せよ」と勧告を出しており、自由な散歩もままならない異常事態が続いている。

かつてはのどかな湖底の住人だったウチダザリガニだが、近年の個体数増加に伴い、その支配力はかつてない領域に達している。マリモが築き上げた独自の健康法や、光合成効率を高めるための集団行動も、彼らの捕食活動の前では無力だ。今回、被害の大きかった個体の多くが「エッジが立っている(=成長状態が良好)」個体であったことも判明し、健康であることが生存のリスクを高めるという皮肉な逆転現象が起きている。湖底にはいま、健康を維持すべきか、それとも弱々しく見せて身を守るべきかという、究極の二択が突きつけられているのだ。

「こんなのおかしい! せっかく一生懸命、水を吸って膨らんだのに、一口で持っていかれるなんて!」と憤る被害個体もいれば、「むしろ、これでいびつな形になったから、次は『あえて崩れた美学』という新しいトレンドを打ち出せるかもしれない」と前向きすぎる解釈を示す個体も現れている。しかし、大半のマリモにとって、この暴力的な断捨離は恐怖そのものだ。湖底の平和と、健康で美しい球体を取り戻すための闘いは、今まさに正念場を迎えている。