不眠に悩む湖底住民たちの間で、今、ある異変が起きている。それは、自らの繊維を巧みに絡ませて形成する『極上の微睡み・天然マリモ枕』の流行だ。この枕、マリモが夜間に放出する特殊な微量成分を吸い込むことで、一瞬にして深い眠りへと誘うという触れ込みで、発売直後から飛ぶように売れている。開発者によれば、繊維の密度が高いほどリラックス効果が高まり、熟睡できるという。しかし、阿寒湖保健所には「一度寝ると、次に目覚めるまで三日間動けなくなる」「繊維が顔に絡まりすぎて、朝起きるとアフロヘアのようになっている」といった相談が殺到。健康増進を目的としたはずが、過度な安眠効果が仇となり、湖底の経済活動が完全に停止する『沈黙の三日間』という異常事態を招いている。

そもそもマリモは光合成によって酸素を供給する生命体だが、近年はストレス社会の煽りを受け、メンタルケアを謳う製品が急増していた。今回の枕ブームは、慢性的な「丸まり疲れ」を解消したいというニーズに合致したものだ。専門家は「適切な使用時間は一晩まで。それ以上の使用は、意識が植物化し、移動能力を喪失するリスクがある」と警鐘を鳴らす。かつては美しく丸いフォルムを目指して競い合っていたマリモたちが、今では泥のように眠ることに情熱を注ぐ姿には、進化の袋小路を感じざるを得ない。湖底の平和を保つには、この誘眠効果を薄める『カフェイン水草』の投入が必要との声も上がっているが、反対派の「いや、単純に寝たいだけだ」という主張も根強く、議論は平行線を辿っている。

世間の反応は賛否両論だ。「朝起きたら体が藻の匂いしかしなくて困るが、寝つきは最高」という肯定派がいる一方で、「隣の友人が三日間起きないから死んだのかと思った」という心配の声も多い。中には「寝ている間に水流でどこかへ流されそうになった」という恐怖体験を語るマリモも後を絶たない。湖底住民の間では、もはや枕の使用は「度胸試し」に近いアクティビティと化しており、SNS上では「#マリモ枕寝落ちチャレンジ」というタグがトレンド入りするなど、もはや制御不能な事態に陥っている。健康を追い求めた先にあるのが、深い深い昏睡(?)だとは、誰も想像しなかっただろう。