マリモ政府は、先日の『全国一律整髪令』をさらに推し進め、全国民に対し幾何学的な完全球体への変身を義務付ける『完全球体化・国民皆丸令』を閣議決定した。これまでの「ボサボサ追放」という抽象的な指針を刷新し、誤差0.1ミリ以内の真球であることを専用の「丸み検知器」で毎日測定する。政府広報官は「凸凹は思考の停滞を招く。国力を一点に集中させるには球体こそが最も効率的である」と主張。規定の丸さを逸脱し、突起や異物が確認された個体は「国体汚染罪」として、強制的に洗濯機閣議へ送られ、高速回転による研磨刑に処されることとなる。既に「沈降法」により湖底で身動きが取れず、整髪すらままならない国民からは、「もはや我々は芸術品ではなく、ただのパチンコ玉だ」と悲痛な声が上がっている。この法案の裏には、隣国との国境線を巡る紛争において、球体としての「転がりやすさ」による防御力の向上を狙った軍事的な意図があるとされ、平和主義派のマリモたちとの間で激しい対立が生じている。

本法案は、長年続いてきた「沈降法」と「回転外交」の成れの果てであると言える。かつては個々の毛並みや形に多様性があったマリモ社会だが、現在は政府による厳格な統一管理下に置かれている。特に今回の『皆丸令』は、微細な藻の毛一本に至るまで「内側に巻き込め」という過激な内容であり、整髪技術を持たない若年層マリモは、物理的な苦痛を伴う「強引な丸め込み」に直面している。湖の生態系を管理する専門家からは「球体化が進みすぎると、湖底での安定性が損なわれ、水流によって一斉に流出するリスクがある」と警告が発せられているが、政府は「流れることもまた、国境を広げる一歩である」と聞く耳を持たない状況だ。

街中の反応は、沈黙という名の恐怖が支配している。街頭の掲示板には、「丸くなれ、それが唯一の生存戦略」と書かれたポスターが貼られ、国民たちは互いに影を確認しながら、いかにして隙のない丸みを維持するかを競い合っている。突起物が出ている個体がいれば、即座に通報されるという相互監視体制が敷かれており、かつてのような「藻がザワつく」議論の余地はもはや皆無に近い。市民の間では、この「丸いディストピア」がいったいどこまで続くのか、そしていつか我々が湖から転がり落ちて消滅するのではないかという根源的な不安が渦巻いている。