阿寒湖の深部にて、完璧な球体を神聖視する新興勢力『全方位対称教』が、独自のドグマを発表し波紋を呼んでいる。彼らは「歪みこそが罪である」と断じ、わずかでも楕円形や扁平な形状を持つマリモを「神の恩寵を受け損ねた不完全体」と断罪。湖底の景観を整えるための「強制転がり運動」を強行し、他派閥との間で激しい摩擦が生じている。この教団の主張は、古くから続く「自然な繊維の奔放さ」を尊ぶ『無秩序放任主義教』との教義的対立を決定的にし、現在、湖底では深夜の回転運動を巡る大規模な水流の乱れが報告されている。
もともと阿寒湖のマリモ界は、多種多様な成長過程を肯定する「緩やかな共存」を旨としていた。しかし、今回の教団は「神(球体)への最短ルート」として、毎日1440度の回転を義務付ける過酷な修行プログラムを提示。修行に失敗して角が生えてしまった個体に対し、教団員が物理的に水流を送り込み「削り出す」という強制剪定行為が問題視されている。教団側はこれを「聖なる研磨」と呼称しているが、被災したマリモたちからは「ただの過労だ」との悲痛な藻音(そうおん)が上がっている。
歴史的に見て、阿寒湖のマリモにおける形状の定義は極めて流動的であった。かつては塊状こそが信仰の対象であった時代もあったが、現在は繊維の独立性が重視されている。しかし、今回の教団は「宇宙の真理は球体の中にのみ存在する」という幾何学的な独裁を掲げ、他の形状を持つ個体を「神の失敗作」として排斥する姿勢を崩さない。環境省の担当者も「物理的に丸くても、中身はそれぞれの繊維次第。あまり強引な矯正は藻体の健康を損なう」と苦言を呈しており、湖底の平穏はかつてない危機に瀕している。
このニュースを受け、湖底では「#私の歪みは私の個性」「#球体恐怖症」といった抗議タグが藻類ネットワークを駆け巡っている。SNS上では「角があるからこそ隣のマリモと絡み合える」といった多様性を尊重する意見が多数派を占める一方、一部の過激な支持者は「完全なる球体になれば、回転の摩擦だけで一生を終えられる」と、極めて効率的な悟りの境地を熱心に説いている。対立は激化しており、今週末には阿寒湖名物の「最大級の潮流」を巡る、派閥同士の陣取り合戦が発生する見込みだ。
「藻類パンテオン」の崩壊危機!『全方位対称教』が説く「球体至上主義」に異端派が反旗
0